
転倒・迷子・入浴トラブルなど、多くの“困りごと”は環境のギャップから生まれます。大規模リフォームの前に、5万円以内でも効くミニ改修と福祉用具から。原則は、動線をまっすぐ/段差と滑りを消す/表示と明かりで迷いを減らすの3つ。本記事では、部屋別の実装と、レンタルと購入の使い分け、優先度のつけ方をテンプレでまとめました。
原則:減らす→足す→示す(引き算→足し算→サイン)
① 減らす(引き算)
- ラグ・コード・低い家具を動線から撤去(寝室⇄トイレが最優先)。
- 床材の段差・反りを確認。緩衝マットで段差2〜3mmも解消。
② 足す(足し算)
- 手すり・取っ手・滑り止めなど、“つかまる/止まる”ポイントを連続配置。
- 足元灯・誘導灯を等間隔に置き、影のムラを減らす。
③ 示す(サイン)
- 扉に大きな文字+ピクト+矢印(トイレ/浴室)。
- 収納は写真ラベル。よく使う物は1セットだけ見える位置。
部屋別:今日からできる実装
玄関・廊下
- 段差に置き型手すり+すべり止めテープ。
- 靴は2足のみ見える収納。残りは箱へ(迷いを減らす)。
- 外出対策は二重ロック+連絡カード携帯。
トイレ
- 入口に「トイレ」サイン+矢印。夜は足元灯で誘導。
- L字手すりまたは置き型フレームで立ち座り支援。
- 衣類は前開き・少ない留め具に統一。
浴室・洗面
- 洗い場と浴槽にすべり止めマット、跨ぎは浴槽手すりで高さ短縮。
- 温度差対策:入浴前に脱衣所を先温め(小型ヒーター)。
- 拒否が強い日は足浴・清拭へ置換(成功体験優先)。
寝室
- ベッド脇に立ち上がり手すり+足元灯。トイレ方向に誘導灯。
- 床は滑り止めシートで固定。ラグ撤去。
- 時計は大きな文字。夜間は眩しさを避け間接照明。
台所
- 火元周りは使用中の道具だけ見える位置へ。包丁は定位置ボックス。
- IHロック/ガス遮断機能の確認。タイマー付き家電へ置換も検討。
- 冷蔵庫に「今週棚」を1段つくり、使い切り運用。
照明・サイン共通
- 足元灯・誘導灯は2〜3m間隔、影が途切れない配置。
- サインは黒文字×白地でコントラストを確保。
- 鏡は夕方に反射で不安増幅があれば布でカバー。
福祉用具:レンタルと購入の使い分け
レンタル向き
- 介護ベッド・マットレス・歩行器など高額×状態変化の大きい物。
- 試用→合わなければ交換できる利点を活かす。
購入向き
- 置き型手すり・浴槽手すり・足元灯・誘導灯・サイン類など汎用・長期使用の小物。
- “定数化”して在庫閾値(◯個切ったら買う)で補充。
※ 制度や給付は地域差が大きいため、詳細は地域包括支援センター等に確認を。
5万円でできる“優先度付き15選”(目安)
- 足元灯×4(寝室→トイレの動線)
- 誘導灯×2(廊下・トイレ前)
- 置き型手すり(ベッド脇)
- 浴槽手すり+洗い場滑り止めマット
- トイレL字手すり or 置き型フレーム
- 玄関段差用すべり止めテープ
- コード固定クリップ&配線カバー一式
- ドア「トイレ」「浴室」サイン(文字+ピクト+矢印)
- 冷蔵庫用「今週棚」仕切り
- 収納の写真ラベル用プリントセット
- 室温対策の小型ヒーター(脱衣所)
- 転倒時用のワイヤレス呼び出しベル
- 靴の滑り止めシート&玄関手すり補助
- IHチャイルドロック or ガス遮断タイマー
- 連絡カード(氏名・連絡先)+名刺入れ
最初は1〜6から。翌週に7〜10、その次に11〜15と段階導入でOK。
導入の順番:転倒>夜間>火元>迷子(リスク順)
- 転倒対策(段差・滑り・手すり)→最優先。
- 夜間動線(足元灯・誘導灯・サイン)。
- 火元管理(IHロック・タイマー・見える収納)。
- 外出対策(二重ロック・連絡カード)。
チェックリスト(印刷して壁へ)
- 寝室⇄トイレの動線からラグ・配線を撤去した
- 足元灯・誘導灯を2〜3m間隔で設置した
- トイレ・浴室にサインと矢印を貼った
- 浴槽手すり・滑り止めを設置した
- 置き型手すりをベッド脇に置いた
- 冷蔵庫に「今週棚」を作った
- 連絡カードを財布・上着ポケットに入れた
まとめ:家を“安心の導線”にする
人を変えるより、家を変える。引き算→足し算→サインの順で、転倒・夜間・火元・迷子のリスクを先に潰せば、介護の摩擦は確実に減ります。今週は動線の引き算+足元灯から始めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. まず1つだけなら何を買う?
寝室⇄トイレの足元灯。夜間転倒と迷子を同時に下げます。
Q. 手すりは工事が必要?
まずは置き型・つっぱり型から。固定工事は必要性が見えたら検討でOK。
Q. 物が多くて片付けが進みません
“使う道具だけ見える”を徹底。残りは箱へ。写真ラベルが迷いを防ぎます。
家を“安心の導線”へ。小さな一手から、静かに始めましょう。