
在宅介護は“突発”の連続に見えますが、1日の時間割を置くと波が穏やかになります。完璧な予定表ではなく、揺らぎを前提にした「枠」を置くのがコツ。本記事は、食事・排泄・活動/休息・睡眠という4本柱で1日を設計するテンプレと、認知症ケアで使える声かけの型、夜間の安心設計までをまとめました。昨日の続きからでOK。まずは“枠”を置き、次に“例外の扱い方”を決めましょう。
4本柱の全体像(先に“枠”を置く)
- 食事:3回+水分 … 目安の時刻と所要時間、食べやすい形をメモ
- 排泄: 起床後・食後・就寝前の声かけ、トイレ導線と夜間対策
- 活動/休息: 午前の短い外出か室内活動、午後の休息(昼寝は30分目安)
- 睡眠: 就寝/起床の±30分の規則性、夜間覚醒時の対応ルール
※ “例外日”は当然あり。崩れても次の枠に戻るのが時間割の価値です。
① 食事:食べやすさ>量、時刻の安定が最優先
時間割テンプレ(例)
- 朝食 7:30(20〜30分)/ 昼食 12:00(20〜30分)/ 夕食 18:00(30分)
- 水分:起床直後にコップ1杯、日中は1〜2時間おきに少量
実装のコツ
- 一口を小さく、よく噛める形状に(刻み・とろみ・やわらかめ)。
- テレビやスマホを消し、視覚刺激はテーブル上だけに。
- 食器はコントラスト色、持ちやすい軽量品を採用。
- 食べない日は時刻だけ維持(量は少なめでOK)。
② 排泄:声かけのタイミングと導線の設計
声かけのタイミング
- 起床後/食後15〜30分/外出前/就寝前
- 夜間覚醒時は明るさを最小限+一言だけの誘導(長会話は避ける)
導線と環境
- トイレまでの道に遮る物を置かない、床の段差・マットを除去。
- 扉に「トイレ」の表示、夜は足元灯で誘導。
- 衣類は上下がわかる配色、留め具は少なめに。
③ 活動/休息:午前に小さなハイライト、午後は波をならす
午前の活動(15〜30分)
- 散歩(家の周り/ベンチまで)/ベランダ日光浴
- 家事参加:洗濯物を畳む、テーブル拭き、観葉植物の水やり
- 手作業:大きめのジグソー/塗り絵/写真アルバム
午後の休息と“だらだら防止”
- 昼寝は30分目安(長いと夜間覚醒につながる)。
- 静かなBGM/ぬいぐるみ・クッションで安心刺激。
- 夕方の“黄昏不安”は、明るさ+軽い声かけで先手を打つ。
④ 睡眠:±30分の規則性と、夜間覚醒の“先回り”
就寝前のルーティン(20〜30分)
- ぬるめの入浴/足浴/就寝前の水分は少量。
- 歯磨き→トイレ→パジャマ→就寝の固定順序。
- 寝室は足元灯+トイレ方向の誘導灯、時計は見やすく。
夜間覚醒の対応ルール
- 否定せず短文で:「心配だったね、トイレ行って戻ろう」。
- 水分・排泄・寒暖のチェック→ベッドへ戻す。
- 会話を長引かせず、次の“枠”へ導く(就寝 or 朝の支度)。
声かけの型:共感→提案(選択肢は2つまで)
NG→置き換え例
- NG:「違うよ、忘れてるよ」→ 置き換え:「そう感じたんだね。今は◯◯しよう(選択肢A/B)」
- NG:「早くして」→ 置き換え:「一緒に上着を着よう。こっちとこっち、どっちが良い?」
- NG:長い説明→ 置き換え:短い肯定+行動の提案
言葉の正しさより、安心と次の一歩を届けるのが目的です。
夜間の安心設計:迷子・転倒・不安を“物理で先手”
今日できる3手
- 足元灯・誘導灯を増設(コンセント式でOK)
- 寝室⇄トイレの動線からラグ・配線を撤去
- 玄関は二重ロック+連絡カードを常時携帯
1日のひな形(印刷して冷蔵庫へ)
- 07:00 起床・水分 → 07:30 朝食 → 08:00 トイレ・整容
- 10:00 活動(散歩/家事参加/手作業 15〜30分)
- 12:00 昼食 → 12:30 トイレ → 13:00 休息(昼寝30分)
- 15:00 水分・軽いおやつ → 16:00 室内活動(写真/音楽)
- 18:00 夕食 → 19:00 トイレ・入浴/足浴
- 21:00 就寝ルーティン → 21:30 就寝(±30分)
崩れた日は、次の枠から再開すればOK。戻る場所があることが安心です。
“例外日”の扱い方:3ステップでリセット
- 原因の仮説(外出疲れ/体調/環境変化)を1行メモ。
- 今夜は短縮版ルーティン(入浴→足浴へ置換など)。
- 翌朝、時間割に戻す(朝食の時刻を優先)。
家族ミーティング(15分):数字<手応えの共有
- 今週よかった1つ/困った1つ/来週の1ミリ。
- 在庫の定数表と時間割を壁に掲示、変更は日付入りで。
今日の5分でできること
- 1日のひな形をメモに書き、冷蔵庫に貼る
- 就寝前ルーティンの手順を3行で固定
- 声かけの置き換え例を1つだけ覚える
まとめ:枠があるから、揺れても戻れる
在宅介護の時間割は、現実を縛るためでなく、戻る場所を作るためにあります。4本柱(食事・排泄・活動/休息・睡眠)の枠を置き、例外日は短縮版でやり過ごし、翌朝にそっと戻る。これだけで、介護者の不安も本人の混乱も静かに減っていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 時間割どおりに進まない日が多いです
正常です。次の枠から再開すれば十分。うまくいった要素を1行メモして、翌日に“再現”を1つだけ。
Q. 昼寝で夜眠れなくなります
昼寝は30分目安に短縮。午後の活動を5〜10分だけ増やすと夜の入眠が整いやすくなります。
Q. 声かけがケンカになりがちです
正しさを伝えるより、安心→行動提案(選択肢は2つ)に切り替えましょう。
枠を置けば、揺れても戻れる。小さく始めて、静かに続けましょう。