
いい事業所を選んでも、運用が曖昧だと効果が出ません。本記事は、(1)枠に固定する定数化、(2)キャンセル規定と代替日のルール、(3)“帰宅後”の評価KPI、(4)月次レビュー、そして(5)トラブル時の文面テンプレまでを一気に整える上級編。家族チャット運用の型と、費用の三層モデルへの落とし込みも解説します。
① 枠に入れて“定数化”する(時間割へ固定)
デイ(通所介護)の固定化
- 週◯回(例:火・金)を固定。帰宅時刻も時間割に明記(例:16:00帰宅)。
- 午後の黄昏不安が強い家は、帰宅を早める枠(〜15:30)を検討。
- 入浴目的なら入浴曜日を固定し、家の入浴は他曜日にずらす(重複回避)。
ショート(短期入所)の固定化
- 月1回◯泊◯日を“家族の休息枠”としてカレンダーに織り込む。
- 退所日の翌日は負荷の低い予定(洗濯・片付けを見越す)。
- 費用は二段ロケット資金の特別費に計上。
② キャンセル規定×代替日:損を出さない運用
- 規定の読み方:何日前・何時まで・何%をメモ。“病状悪化時の扱い”も確認。
- キャンセル時は代替候補をその場で2つ提示(例:今週木 or 来週月)。
- 送迎条件(階段・EV・時間帯)の例外運用は書面やチャットに残す。
家族チャット定型文(キャンセル→代替)
「◯/◯(火)デイを発熱のためキャンセル。代替で木 or 来週月に振替できるか先方へ確認します。キャンセル規定=前日17時以降50%。」
③ “帰宅後”で評価する:KPIと1行ログ
通所・宿泊の評価は施設内の楽しさではなく、帰宅後の暮らしの質で測る。
KPI(デイ)
- 入眠までの時間(目安30分以内)
- 夜間覚醒回数(◯回→◯回)
- 食事量(普段比◯%)
- 排泄の成功(誘導回数/失敗回数)
KPI(ショート)
- 帰宅後24hの疲労度(昼寝時間・ぼんやり時間)
- 生活リズムの戻り(翌日の起床・食・排泄)
1行ログ(家族チャット)
- 16:20帰宅→夕食7割→入眠20:50/夜間覚醒1回(誘導◯)
- ショート退所→午前は休養→翌朝6:40起床・食事8割
④ 月次レビュー:続けるか・変えるかを“数値で”決める
- 指標:夜間覚醒・入浴成功・本人の言葉(引用)・家族の負担感。
- 結論は3択:継続/曜日変更/事業所変更。次の1ヶ月だけ試すA/B案も。
- 費用は三層+特別費に反映(月次固定費→特別費の配分見直し)。
レビューシート(要点)
- 良かった:____/困った:____
- KPI:入眠◯分・夜間覚醒◯回・入浴成功◯/◯
- 本人の言葉:「____」
- 来月の変更:曜日(火→水)/入浴曜日固定/午後の静かな活動へ切替
⑤ トラブル時の“短文テンプレ”集(コピペOK)
入浴を断られた/拒否が強かった
件名:入浴支援の状況共有(△△ ◇◇)
本文:本日の入浴は拒否強め→足浴対応との共有、ありがとうございます。声かけの型(短文+二択)と時間帯の工夫案があれば教えてください。家では就寝前の温めを併用してみます。
送迎遅延・連絡ミスが続く
件名:送迎の到着時刻と連絡手順の確認
本文:最近の到着が予定より10〜20分後になっています。渋滞等の状況と、5分以上の遅延時の連絡手順をご共有ください。家側の待機場所も見直します。
転倒・ヒヤリの報告が曖昧
件名:ヒヤリ事例の記録共有のお願い
本文:本日の立ち上がり時ふらつきについて、時間・場所・介助量の記録を可能な範囲で共有いただけますか。家では立ち上がり手すりと誘導灯の位置を調整します。
⑥ 送迎・持ち物の“定数化”チェックリスト
- 玄関に送迎待機ゾーン(ベンチ・コート・連絡カード)。
- 持ち物は写真ラベルのバッグに固定:連絡帳/お薬/替え衣類/おむつ等。
- 季節で変わる物(帽子・カーディガン・湯たんぽ)は玄関右手BOXに“今季だけ”。
⑦ 家族チャット運用(例:固定メッセージ)
- 時間割:デイ=火・金(入浴=金)/ショート=第3水〜金
- キャンセル規定:前日17時以降50%→代替日を必ず提案
- KPI:入眠◯分/夜間覚醒◯回/食事量◯%/入浴成功◯/◯
- 連絡ルート:事業所→家族連絡係(◯◯)→家族チャット
⑧ 費用を家計に反映:三層+特別費のどこに置く?
- デイ定常分=層1(土台)へ。送迎追加・入浴加算は層3(予備)で吸収。
- ショート月1=特別費(医療・介護枠)に年額で確保。
- 増減が続く場合は、見込み線(楽観/中位/悲観)を更新。
今日の5分でできること
- カレンダーにデイ曜日と入浴曜日を固定表示
- 玄関に送迎待機ゾーンを作る
- 家族チャットにキャンセル→代替の定型文をピン留め
まとめ:選んだ後が“本番”。枠と数値で回す
施設選びの勝敗は契約後の運用で決まります。時間割への定数化、キャンセル規定と代替の型、“帰宅後”KPI、月次レビュー、トラブル時の短文テンプレ——枠と数値で回せば、暮らし全体の質が底上げされます。
よくある質問(FAQ)
Q. 行きたくないと言う日が増えました
目的を再点検(入浴?活動量?家族休息?)。曜日や活動、滞在時間を1ヶ月だけA/Bで試して比較します。
Q. 料金の変動が読みづらい
加算・送迎条件を洗い出し、層3(予備)に月額2千〜5千円の“ゆとり枠”を仮置き。
Q. 事業所に要望を伝えづらい
本文の短文テンプレをそのまま利用。事実→希望→家側の対策の順が伝わりやすいです。
“選んで終わり”にしない。枠と数値で、暮らしに効かせる運用へ。