
在宅介護で最優先すべき片づけは、全部じゃなく動線だけ。寝室→トイレ→洗面→居間の“ケア動線”上から障害物を抜くだけで、転倒・迷子・拒否の多くが減ります。本記事は、撤去の順番(15箇所)、写真ラベルの作り方(レイアウト付き)、90分スプリントの台本、そして効果を測る指標まで“そのまま使える”形にしました。
原則:引き算→誘導→定数(増やさない三段構え)
- 引き算:ラグ・配線・低い家具・足元の飾りを動線から撤去。
- 誘導:足元灯2〜3mピッチ、扉に「文字+ピクト+矢印」、床に停止位置マーク。
- 定数:「使うセットだけ見える」「補充は閾値で」のルール化。
① 15箇所の撤去順(上から順にやるだけ)
- 寝室ドアの内側ラグ
- ベッド脇の小型テーブル(手すりと干渉する場合)
- 延長コードの床這い(配線カバーへ移設)
- 廊下のランナーラグ
- 廊下の低い飾り棚・観葉植物
- トイレ前のマット類(滑り/段差)
- 脱衣所のバスマットの多重敷き
- 浴室入口の突起物(劣化したマット)
- 居間の足元ヒーター位置(通路へ出ている物)
- 台所の床置きストック(ペットボトル箱など)
- 玄関の靴溢れ(2足以外は箱へ)
- 階段1段目の装飾/置物
- 冷蔵庫の扉メモ乱立(重要1枚+今週メモだけ残す)
- テレビ前の配線タップ露出
- 寝室足元の衣類カゴ(通路外へ移動)
※ 迷ったら「寝室⇄トイレ」の直線上から。5箇所終えたら足元灯を点灯し、段差の影が消えているか確認。
② 写真ラベルの作り方:迷いを“1秒”で消す
スマホで使うセットだけを撮り、A4に4枚配置→印刷→ケース正面へ貼る。
掲載内容(1枚あたり)
- 写真(正面から、背景を無地に)
- 太字タイトル(例:「夜のトイレセット」)
- サブ行(例:ペーパー・おしりふき・消臭)
- 補充の閾値(例:残り1つで補充)
A4レイアウト(テキスト版)
┌──────────────┬──────────────┐ │ ① 写真(正面) │ ② 写真(正面) │ │ タイトル/閾値 │ タイトル/閾値 │ ├──────────────┼──────────────┤ │ ③ 写真(正面) │ ④ 写真(正面) │ │ タイトル/閾値 │ タイトル/閾値 │ └──────────────┴──────────────┘
コツ:写真は“セット”で撮影(単品ではなく使用順に並べる)。背景は白壁や無地の布で十分。
③ ゾーニング:動線外へ“退避”させる置き場所
- 退避棚:廊下の奥側・ソファ背面の通らない側に1段確保。
- 定位置トレイ:鍵・財布・連絡カードは玄関内側右手に。
- 今週棚:冷蔵庫1段は今週使う物だけ。残りは“待機エリア”へ。
④ 90分スプリント:台本(タイムボックス方式)
0–15分:計画と準備
- 対象動線:寝室→トイレに限定。写真「Before」を3枚撮影。
- ツール:45L袋×2/配線カバー/養生テープ/ハサミ/雑巾。
15–60分:撤去(上記15箇所のうち該当点を一気に)
- 袋A=処分、袋B=保留(24時間保留ボックスへ)。
- 配線は壁沿いへ。ラグは巻いて一旦退避。
60–75分:誘導(足元灯・サイン)
- 足元灯を2mピッチで仮置き、曲がり角とトイレ前に追加。
- ドアへ「トイレ」サイン(文字+ピクト+矢印)。床に停止位置テープ。
75–90分:写真ラベル&After撮影
- “夜のトイレセット”“就寝前トレイ”の写真ラベルを作成・貼付。
- After写真を3枚撮影→家族チャットへ共有。
⑤ 効果を測るKPI:数値で“手応え”を見る
- 夜間のヒヤリ回数(つまずき・ふらつき)… 週次で件数。
- トイレ到達時間(寝室ドア→便座着座)… 目安60秒以内。
- 帰宅願望から座位転換までの時間… 目安3分以内。
- 迷い質問回数(「どこ?何?」)… サイン設置前後で比較。
⑥ 再発防止:毎週10分の“リセット”
- 毎週日曜:動線に物が“侵入”していないか巡回。
- 写真ラベルの内容が変わったら撮り直し(季節用品の入替)。
- 「保留ボックス」は24時間で判断(残す/手放す/別室へ)。
⑦ 家族チャットの定型文(コピペOK)
今日の成果
- 寝室→トイレのラグ撤去/配線固定/足元灯×5設置
- 写真ラベル2枚作成(夜のトイレセット/就寝前トレイ)
- ヒヤリ回数:先週3→今週1
お願い
- 通路に荷物を置かない(保留は24h箱へ)
- 足元灯の電池交換は月初にまとめて
⑧ よくある失敗→回避策
- 全部片づけようとして止まる → 動線だけ。直線1本をまず通す。
- 写真ラベルがごちゃつく → 1枚1セット、背景無地、太字タイトルのみ。
- 家族が元に戻す → 定型文を冷蔵庫に掲示、週10分リセットを家族で分担。
今日の5分でできること
- 寝室ドア内側のラグを巻いて退避
- 延長コードを壁沿いへ寄せ、テープで固定
- “夜のトイレセット”を1枚だけ写真ラベル化
まとめ:動線の引き算が、いちばん効く片づけ
片づけの目的は“安心にたどり着く”こと。動線から抜く→光で示す→セットを定数化の三段構えで、転倒と迷いは目に見えて減ります。まずは寝室⇄トイレの直線を、今日通しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 本人が物を動かしてしまいます
“退避棚”を用意し、「ここだけは自由に置いてOK」を明確に。動線は家族が毎週10分でリセット。
Q. 写真ラベルはどこに貼る?
ケース正面・目線の少し下。よく使う物は“見える一段”に集約。
Q. やる順番は固定?
基本は15箇所の順でOK。段差が多い家はラグ・配線を最優先で。
“全部”じゃなく、“通る道”だけ削る。今日、直線を通しましょう。