
在宅介護の家計は、毎月の固定費だけ見ても不十分。年に数回のドーン支出(医療の自己負担上振れ・家電更新・小規模の住み替え/引越し)で崩れがちです。本記事は、月次の三層モデル(土台費用/変動費/予備費)に、年次の特別費を“第二段”として設計し、さらに見込み線(3シナリオ)で先回りする実務ガイド。口座分けと自動振替、家族チャット運用まで“そのまま使える”形で提供します。
全体像:一次(毎月)+二次(毎年)の二段ロケット
- 一次ロケット(毎月):土台費用・変動費・予備費の三層でキャッシュフローを安定。
- 二次ロケット(毎年):医療高額・家電更新・引越し等の特別費を年単位で別勘定。
- 見込み線:楽観/中位/悲観の3線で、上振れ幅を前もって吸収。
① 月次の三層モデル:土台→変動→予備の順に固定化
三層の定義(テンプレ)
- 層1:土台費用(必須・固定に近い)… 住居/光熱(平均)/通信/保険/ケア基本料
- 層2:変動費(抑制可能)… 食・日用品・移動・衛生/消耗品・介護消耗品
- 層3:予備費(月の凸凹吸収)… 医療上振れ/一時的増加/付き添い交通等
※ 単位=万円。実額はご家庭や地域によって異なります。最初は「去年カード・通帳・家計アプリ」から平均を拾って仮置きでOK。
運用:口座分け&自動振替
- 固定費口座:層1の引落し専用(給料日翌日に自動移動)。
- 変動費口座:層2のデビット/プリペイド/Pay連携。週予算ボックスで上限管理。
- 月次予備口座:層3を毎月移す“緩衝帯”。使った翌月に自動で補充。
② 年次の特別費:第二段ロケット(3本柱)
柱A:医療の上振れ(検査・入院・装具・歯科)
- 目安:年10〜30万円のレンジで仮置き(世帯・制度により差)。
- 準備:医療用特別口座へ毎月積み立て(例:月1〜2.5万円)。
- 運用:発生時はここから支出。領収書は月末に写真で保存。
柱B:家電更新・住宅小修繕
- 対象:冷蔵庫/洗濯機/エアコン/給湯器/寝具/マットレス/手すり等。
- 目安:年5〜20万円。寿命表から逆算し、毎月の積立へ。
柱C:住み替え/引越し(ミニ版)
- 想定:近居化(実家↔自宅の距離短縮)やバリアフリー部屋への移動。
- 目安:年10〜50万円レンジで“種銭”をプール(実行年は別途増額)。
③ 見込み線:楽観/中位/悲観の3線で“上振れ”に備える
二段ロケットの第二段(特別費)に対し、3つの線を引きます。
線の定義
- 楽観線:平常年。検査のみ、家電は小物更新中心。
- 中位線:短期入院/大物家電1台/小規模の住み替え準備。
- 悲観線:入院+家電2台+住み替え本格化。月次予備の追加移管も視野。
※ 数字は設計のための仮置き。ご家庭の水準に置き換えてください。
④ 口座設計と自動化:お金の“混ざり”を無くす
- 固定費口座(層1)/変動費口座(層2)/月次予備口座(層3)
- 特別費口座(第二段):医療・家電・住み替えのサブ口座3つまで分けてもOK。
- 給料日翌日、自動振替で各口座へ定額移動。余りは特別費口座へ自動スイープ。
⑤ ルール集:事故を減らす“運用の一言”
- 夜の決断禁止(10万円超の支出は翌朝10分レビュー)。
- 1万円超は事前合意(家族チャットでOKスタンプ)。
- レシートは月末1回の写真化→家族チャットにアルバムで保管。
- カード/Payの引落し先は固定費口座のみに集約。
⑥ 家族チャットの型(コピペOK)
月初共有
- 土台14.0/変動7.0/予備2.0=合計23.0を移管済み
- 特別費:医療1.7/家電1.0/住替2.0を積立セット
- 今月の見込み線=中位(歯科+給湯リモコン)
10万円超の支出ドラフト
「給湯器のコントローラー故障。見積り6.8万円+工事1.2万円=合計8.0万円。翌朝判断でOK?」
月末レビュー
- 良かった:特別費の医療枠で上振れ吸収
- 困った:変動費(食)が+0.6 → 来月は週予算ボックス増やさず“買い出し曜日固定”
今日の5分でできること
- 口座ニックネームを「固定費/変動費/予備/特別費」に変更
- 去年のカード明細から家電更新3点をリスト化(寿命の見込み線)
- 家族チャットに「1万円超は事前合意」「夜の決断禁止」を固定表示
⑦ よくある落とし穴→回避策
- 落とし穴: 特別費と月次予備が同じ口座で混ざる → 口座を物理分割、自動振替で満たす。
- 落とし穴: 収入変動月に積立を止める → 最低ライン(50%)だけでも継続。
- 落とし穴: 家電が同年に連鎖故障 → 寿命の分散カレンダーを作り、1年1台更新を目安。
まとめ:毎月は“枠”で、毎年は“見込み線”で守る
在宅介護家計の強さは、混ざらない設計から生まれます。月次は三層で固定化、年次は特別費を二段目に。楽観/中位/悲観の3本の見込み線で「上振れ」を先に吸収。口座分けと自動振替、家族チャットのルール化まで行けば、突発に揺れない家計が完成します。
よくある質問(FAQ)
Q. 積立はどの順番で優先?
①固定費(層1)→②予備(層3)→③特別費(医療→家電→住替)の順。層2は週予算で“天井”を作って調整。
Q. ボーナスはどう配分?
原則、特別費口座へ。悲観線の不足分を先に埋め、余りを中位→楽観へ。
Q. クレカとキャッシュレスが複雑
引落し先を固定費口座に一本化。変動費はデビット/プリペイドに寄せて“使い切り”運用を。
混ざりを無くせば、崩れない。二段ロケット資金で、介護家計を強く。