飲み忘れ・飲み過ぎ・受診での言い忘れ——在宅介護のつまずきは運用の仕組みで減らせます。本記事では、お薬カレンダー(週次)×受診メモ(3行)×持参リスト(固定)の三点セットで、今日から回る服薬・通院の型を作ります。完璧より、続く最小単位を先に置きましょう。
全体像:毎日・毎週・受診日の3レイヤーで運用
- 毎日: お薬カレンダーと声かけの型(朝・昼・夕・就寝前)
- 毎週: ピルケースの補充日と残量チェック
- 受診日: 3行の受診メモと固定の持参リスト
① お薬カレンダー(週次):“入れたら勝ち”の仕組み
設置と運用
- 壁掛け or 置き型の週次カレンダーを台所or寝室の動線上に。
- 週1回(日曜夕方など)に1週間分をセットし、補充者のサインを記入。
- 飲み終えた袋(PTP)はカレンダーの裏ポケットに入れて誤飲防止。
声かけの型(短文+二択)
- 「今、朝の分を飲もう。水とお茶、どっちがいい?」
- 「飲んだらカレンダーにチェック入れよう。」
“迷い”を消す小技
- 似た薬は色が違うラベルで区別(朝=青、夕=橙 など)。
- 就寝前の薬は枕元トレイ+足元灯で導線を作る。
② ピルケース補充&残量チェック:週1の“定例”に
チェックリスト(週1・5分)
- □ 来週分のピルケースをセット(朝・昼・夕・就寝前)
- □ 在庫閾値:残り◯日分を切ったら処方or薬局連絡
- □ 変更があれば旧薬を隔離箱へ(誤服用防止)
- □ 家族チャットに「補充OK/残り◯日」と1行報告
③ 受診準備:3行メモと固定の持参リスト
受診メモ(3行テンプレ)
- (1)出来事:例「夜間覚醒が週4回、転倒未遂2回」
- (2)仮説:例「夕方の活動不足+就寝前の水分」
- (3)希望:例「夜間対応の選択肢と服薬調整の相談」
持参リスト(印刷して玄関に)
- □ お薬手帳・処方内容(直近分)
- □ 保険証・各種受給者証・診察券
- □ 生活状況メモ(食事・排泄・睡眠・転倒・不安)
- □ 既往歴・アレルギーのメモ/計測値(体重・血圧の最近の平均)
- □ メガネ・補聴器・杖(当日必要な道具)
④ 受診当日:短く、事実だけを伝える
言い回しテンプレ(家族用)
- 「夜間覚醒は週4回、トイレ誘導が必要です。」
- 「入浴は拒否が強く、週1回は清拭に置換しています。」
- 「転倒未遂は2回/週、場所は寝室と廊下です。」
平均的な日を基準に。安全・頻度・介助量の3点セットで伝えると診断と調整が進みます。
⑤ 服薬変更時の“事故ゼロ”手順
- 旧薬を隔離箱へ(ラベル「旧」)。
- お薬カレンダーとピルケースを全入れ替え(古い分は破棄の手順確認)。
- 家族チャットへ「変更箇所・開始日・チェック担当」を共有。
⑥ 記録テンプレ:服薬・症状・副作用の“1行ログ”
1日1行ログ(コピペ用)
- 朝◯:◯◯ 服薬OK/食事△/便通○/歩行△/メモ:___
- 夕◯:◯◯ 服薬OK/入浴○/転倒×/夜間覚醒△(回数)
週次レビュー(家族チャット)
- 良かった1つ/困った1つ/来週の1ミリ改善
⑦ よくある落とし穴と回避策
- 落とし穴: 服薬カレンダーが“見るだけ”になっている → チェック印と補充者サインを運用。
- 落とし穴: 薬の変更が口頭のみ → 家族チャットに書面化&旧薬隔離。
- 落とし穴: 受診で良い日の話だけをした → 平均の日を短文で数値化。
今日の5分でできること
- お薬カレンダーの置き場所を決めて“空のまま”でも掲示
- 受診メモ(3行テンプレ)をスマホに定型文登録
- 玄関に「持参リスト」を1枚貼る
まとめ:運用は“最小の固定化”から始める
服薬と通院は、仕組みが9割。週次補充・チェック印・3行メモ・持参リストの固定化で、家族の迷いと本人の負担は大きく減ります。まずは今日、置き場所と曜日だけ決めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 多剤で複雑。まず何から?
朝・夕の2コマだけからカレンダー運用を開始。慣れたら昼・就寝前を追加。
Q. 服薬拒否が強いです
水分やゼリーと一緒に、一口を小さく。声かけは短文+二択。医師・薬剤師に剤形変更(粉→細粒/OD等)も相談。
Q. 受診で話がまとまりません
3行テンプレをそのまま読めばOK。数値(回数・回分)を1つ入れると伝わりやすいです。
“続く最小単位”から、今日セットしましょう。