“感じ”をやさしく見える化──ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の使い方と家庭での活用

痛みだけじゃない──暮らしの“感じ”をやさしく見える化するVAS

「どれくらい痛い?」「今日はどのくらい元気?」──言葉だけだと伝えづらい“感じ”を、一本の線に印をつけるだけで共有できるのが
VAS(ビジュアル・アナログ・スケール)です。難しい準備は不要。直感的に示せる/あとで見比べられる/家族で共有しやすいという3つの良さがあり、
子どもから大人まで使えます。痛みだけでなく、疲れ・ストレス・安心度・満足度など、暮らしのいろんな“感じ”に応用できます。

VASってなに?(30秒でわかる要点)

端から端までを「ゼロ〜最大」の連続した直線スケールとして使い、いまの感覚に近い位置へ印(チェック)をつけます。数値の目盛りは基本なし。
印の位置を後から数値化(例:0〜10)すれば、今日と昨日、治療前と後などの比較が一目で分かります。

ゼロ(感じない)最大(これ以上ない)

どう役立つ?(直感的・比較しやすい・記録に向く)

  • 直感的:指さしでOK。言葉にしづらい感覚も共有しやすい。
  • 比較しやすい:同じ人の中で推移が追えます(朝と夜、週ごと等)。
  • 記録に向く:ノートやスマホに日付と一緒に残せば、体調・気分・行動の関係が見えてきます。
  • 家族で使いやすい:子どもは色や顔アイコンと合わせると理解がスムーズ。「今日はどの辺?」と気軽に聞けます。

医療での使われ方の超要約(※診断は医師へ)

医療現場では、VASは痛みなどの強さを数値化して、治療前後や経過の変化を客観的に見るために広く用いられています。
ただし、VASはあくまで本人の主観の“ものさし”。診断や治療方針は医師の判断が必要です。高い値が続く/急に上がる/生活に支障が大きい場合は、早めの受診を検討しましょう。

家庭で使うときの基本ルール

用意するもの(紙/アプリ/スケール例)

  • 紙とペン:ノートやA4用紙に横線を1本。左端=ゼロ、右端=最大。
  • スマホ/PC:メモアプリ、スプレッドシート、フォーム(数値記録が楽になります)。
  • スケール例(コピペOK)
ゼロ(感じない)最大(これ以上ない)

使い方の手順(3ステップでかんたん)

  1. テーマを決める:例)痛み/疲労/安心度/ストレス/満足度など。
  2. 直感で印をつける:迷ったら“いまの感じ”に一番近い場所へ。言葉に直さなくてOK。
  3. 数値化して一言メモ:左端=0、右端=10として、だいたいの数字を記録+「状況・行動」を短くメモ。

目安の考え方:印の位置(mm)÷ 線の全長(mm) × 10 ≒ スコア(0–10)。厳密さより“同じ方法で続ける”ことが大切です。

子ども向けの工夫(色・顔アイコン・言い換え)

  • 色と表情:左=緑の笑顔、右=赤の泣き顔など、色と顔アイコンで直感的に。
  • 言い換え:「痛い→チクチク/ズキズキ」「気分→ワクワク度/もやもや度」など。
  • 選択肢を用意:0・2・5・8・10に丸印を置いて“指さし”でも選べるように。

記録のコツ(同じ時間・同じ条件・一言メモ)

  • 同じ時間帯:起床後や就寝前など、記録する時間を固定。
  • 同じ条件:姿勢・場所・測る順番を揃えると比較がしやすい。
  • 一言メモ:「睡眠◯時間」「運動◯分」「出来事(例:会議/通院)」など原因の手がかりを残す。
  • 週1の見返し:高めが続く/急に上がったときは、休息や受診を検討(迷ったら無理をしない)。

3つの応用シーン(家族の毎日に)

1. からだのサインを見逃さない(痛み・疲れ・睡眠)

痛みや疲労感、眠りの質は、言葉にしづらく人と比べにくいもの。同じ人の中での推移を見るためにVASを使うと、
ちょっとした変化にも気づきやすくなります。

  • 朝と夜の2回測る:例)「痛み」「疲れ」「眠気」を0〜10で記録。
  • 行動とセットでメモ:「散歩30分」「入浴」「カフェイン」など原因の手がかりを一言。
  • 3日以上の高止まりは休息サイン:無理せず予定を軽くする/必要なら受診を検討。

2. 気持ちの見える化(ストレス・楽しさ・安心度)

感情は“良い/悪い”ではなく、強さが揺れるもの。ストレスや安心度、楽しさをVASで数値化すると、
「何をした日がラク?」「どんな時間が落ち着く?」が見えてきます。

  • トリガーを見つける:高いストレスの直前に何があったかを振り返る。
  • “安心を足す”選択:値が高い日ほど予定を詰めない/好きなルーティンを入れる。
  • 子どもには言い換え:「ワクワク度」「もやもや度」など、やわらかい言葉で。

3. 家計の“モヤモヤ”を見える化(お金VAS)

お金の悩みは数式だけでは測れません。不安・満足・納得といった“感じ”をVASで捉えると、
家族の優先順位が整理しやすくなります。

今月の不安度/支出の満足度

  • 不安度(0=不安なし/10=とても不安):固定費の見直しや予備費づくりの目安に。
  • 満足度(0=納得できない/10=とても納得):使ったお金が暮らしの価値に結びついたかを確認。
  • “納得の低い高額支出”に印:次月の見直し候補として家族で話し合う。
不安度:0(安心)— 10(とても不安)
満足度:0(納得できない)— 10(とても納得)

話し合いのトリガーにする(家族会議の導入)

  • “数字で指摘しない”:人の評価ではなく、今月の選択を一緒に振り返る場に。
  • 1つだけ整える:固定費の点検/先取り貯蓄の額/買い方のルールなど、次月の改善を1点に絞る。
  • スターターキットと連動:見える化シートで「不安が高い項目」を優先的に整える。

VASは“良い・悪い”のジャッジではなく、気づきのための物差し。家族それぞれの感じ方を尊重しながら、
次の1歩を相談するきっかけにしましょう。

家族ミーティングに取り入れるミニワーク

週1「VASの時間」の進め方(3分でできる)

  1. 0:00–1:00|チェックイン:深呼吸を3回。今週のテーマを1つだけ決めます(例:痛み/疲れ/安心度/お金の不安度)。
  2. 1:00–2:00|各自で記録:黙って各自がVASに印をつけ、0〜10の数字一言メモ(状況・行動)を書きます。
  3. 2:00–3:00|共有&次の一歩:「よかったこと×1」と「来週ためす小さな一歩×1」だけを短く共有。議論は深追いしません。
  • 比較しない・否定しない:数値は“本人の感じ方”。他人と比べないのがルール。
  • パスOK:話したくない時はパスして大丈夫。書くだけでもOK。
  • 1つだけ整える:改善は「固定費を1項目だけ見直す」など小さく、具体的に

振り返りシート(コピペOK・そのまま使えます)

週1回の振り返りに。セルを埋めるだけで、推移と行動の関係が見えてきます。

日付 テーマ スコア(0–10) 一言メモ(状況・行動) 来週の一歩(小さく具体的に)
__/__ 安心度 6 睡眠7h/夕食後に散歩 就寝前スマホを15分短く
__/__ お金の不安度 7 固定費の契約を未整理 通信費の明細を確認→来週比較
__/__ 疲労感 4 会議多め/昼食遅れ 昼に10分散歩+軽食を持参
0(感じない)10(これ以上ない)

目安:印の位置(mm)÷ 線の全長(mm) × 10 ≒ スコア。厳密さより、同じ方法で続けることを大切に。

※高い値が続く/急上昇する/生活に支障が大きい場合は、早めの受診や専門家への相談も検討しましょう。

使うときの注意点

数値は“目安”として扱う(比較は同一人物内で)

  • VASは主観のものさし:数値は本人の感じ方を簡易に共有するための目安です。
  • 人と比べない:他人との上下をつける用途には向きません。同じ人の中での推移を見ましょう。
  • 測り方を固定:時間帯・姿勢・説明の言葉をできるだけ同じに。条件が揃うと比較がしやすくなります。

高値が続く/急上昇時の受診目安

  • 「高めが続く」はサイン:例)7以上が3日以上続く、または普段より2〜3ポイントの急上昇がある。
  • 生活に支障が出ている:睡眠・食事・学校/仕事に影響がある場合は、早めの相談を。
  • 迷ったら安全側:自己判断で無理を続けず、医療機関や専門家に相談する選択を。

子どもの自己評価を否定しないコツ

  • 感じ方を尊重:「そんなに痛くないでしょ」ではなく、「そう感じたんだね」と受け止める。
  • 言い換えを用意:「痛い」以外に「チクチク・ズキズキ」「もやもや・ドキドキ」など語彙を増やす。
  • 選択式もOK:0・2・5・8・10に目印を置き、指さしで選べるようにすると安心。

数値化に引っ張られすぎない

  • 点数=評価ではない:高いから「悪い」ではなく、休息や見直しの手がかりとして扱う。
  • 短期のブレより傾向:1回の数値に一喜一憂せず、1〜2週間の流れで見ていく。
  • “次の一歩”を一つだけ:睡眠・食事・運動・予定の詰め方など、行動を小さく具体的に。

ミニチェックリスト

  • 同じ時間・同じ説明で記録した?
  • 数値に加えて「状況・行動」を一言メモした?
  • 高めが続く/急上昇に気づいたら、休息 or 受診を検討した?

※VASは診断ツールではありません。体調に不安がある場合は、自己判断に頼らず専門家へご相談ください。

まとめ:言葉にしにくい“感じ”を、やさしく共有するために

VASは、だれかを評価するためではなく、自分の感じ方をていねいに扱うための小さな道具です。
数字は“正解”ではなく、気づきの入口。同じ人の中での変化を眺めていくと、休むタイミングや
効果のあった工夫が見つかり、家族でのコミュニケーションもやわらかくなっていきます。

今日からの小さな一歩

  1. テーマを1つ決める(痛み/疲れ/安心度/お金の不安度 など)。
  2. 一日1回だけ記録:0〜10で印をつけ、一言メモ(状況・行動)を添える。
  3. 週1で振り返る:高い日・下がった日の共通点を見つけ、次の一歩を1つだけ決める。

だいじなのは、完璧さより“続けやすさ”。線を引いて、印をつける──そのシンプルな積み重ねが、
からだと気持ち、そして暮らし全体のバランスを整える助けになります。まずは、今日の一本の線から始めてみましょう。

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