もしものとき、相談できる人はいますか?
「保険には入っているし、制度のこともある程度は調べてある。だから大丈夫…のはず」
そんなふうに思っていても、ふとした瞬間に襲ってくる、言葉にしにくい不安──それは「何かあったとき、自分はひとりぼっちかもしれない」という感覚かもしれません。
育児や介護、病気や離職など、人生には思いがけない出来事がいくつも訪れます。そのとき必要になるのは、制度やお金だけではありません。
「誰に相談できるか」「何をお願いできるか」という“つながりの備え”も、同じくらい大切なのです。
このコラムでは、制度や保険ではカバーしきれない“孤立”というリスクに焦点をあて、「相談できる関係性」を育てる視点から、備えについて考えてみます。
制度や保険だけでは補えない「孤立」というリスク
「医療費が高額になったときは高額療養費制度がある」「子どもが小さいうちは児童手当がある」「夫に万一があったら遺族年金が出る」──公的制度や保険について、私たちはある程度“知っている”つもりになっています。
しかし、制度や保障の“中身”をどれだけ理解していても、それだけで安心が得られるとは限りません。たとえば、実際に何かあったとき、誰に相談できるのか。必要な手続きを、どの順番で進めればよいのか。メンタル的に弱っているとき、一人で冷静に動ける人はそう多くありません。
特に子育て中や介護中の人は、毎日が手一杯で「何かあったときにどうすればいいか」まで考える余裕がないものです。夫婦で協力しているつもりでも、役割が偏っていたり、「伝えたつもり」「わかってるはず」がすれ違いの原因になることも少なくありません。
制度や保険はたしかに備えのひとつですが、それだけではカバーしきれないのが、“孤立”という見えにくいリスク。だからこそ、お金や制度と同じくらい、「頼れる人がいる」「気軽に相談できる場がある」ことも、立派な備えといえるのです。
「頼れる人がいない」現実と、育児・介護世代の孤立リスク
ワンオペ育児、共働きでの時間的なすれ違い、高齢の親が遠方に住んでいる家庭での“見えない介護”──こうした状況は、いまや珍しいものではありません。でも実は、こうした日常の中で私たちは、気づかないうちに「頼れる人がいない」状態に置かれていることがあります。
たとえば、「夫婦で情報を共有しているつもりだったのに、いざというとき連絡先も制度も知らなかった」「親に何かあっても、兄弟と連絡がつかず自分一人で対応するしかなかった」──そんな“緊急時に機能しない体制”は、実際に多くの家庭で起きています。
とくに育児と介護が重なる30〜40代は、生活も責任も多忙を極め、「自分ひとりで抱え込まない仕組み」を意識的につくっておかないと、いざという時に動けなくなるリスクが高まります。
では、何から始めればよいのでしょうか? まずは「誰に、何を、どこまで伝えておくか」を整理してみることが大切です。パートナーに医療費制度や保険の情報を共有する、親や兄弟と介護の連絡体制を確認しておく──こうした“見える化”が、未来の安心の一歩になります。
保険や制度を知っているだけでは、生活は回りません。日常にひそむ“伝えていない不安”に気づき、共有すること。それが、見えない孤立を防ぐ第一歩です。
“つながりの仕組み”を、制度と同じくらい大事にする
「保険には入っているから大丈夫」「制度はある程度調べている」──それでも、いざというときに動けなくなるのは、「人とのつながり」が弱いケースが多いのです。お金や制度は、確かに“物理的な備え”ですが、心の支えや判断の手助けになるのは、やはり人との関係性です。
緊急連絡先を紙に書いておくだけでは不十分です。たとえば、保険証の場所、病歴、親の介護の希望──そういった“細かな情報”をどこまで共有できているか。「もしもの時、自分がいなくても家族が動ける」状態を作れているかどうかが、本当の備えと言えるかもしれません。
大切なのは、「意思の伝達」ができる関係を、日常のなかに育てておくこと。地域や保育園、学校、職場など、暮らしの場にある“複数のルート”でゆるやかなつながりを持っておくことは、想像以上に大きな支えになります。
たとえば、子どもが急に熱を出したときに預けられるママ友の存在、認知症の親の様子を気にかけてくれる地域包括支援センターとの関係、あるいは仕事の休み方を理解してくれる職場の上司。「制度」や「保険」だけでは補えない部分を、人との関係が補ってくれるのです。
備えるということは、物理的な対策だけでなく、“支え合える土壌”を日々少しずつ育てていくこと。それは、制度や保険と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な“安心の基盤”になるのです。
制度も、保険も、“人とのつながり”で初めて活きる
医療保険に加入している。介護サービスの制度も調べてある。各種書類はファイルにまとめて、必要なときにすぐ取り出せる──。そんなふうに「整えている」家庭でも、実際の場面でうまく機能しないことがあります。
その理由は簡単です。どれだけ備えていても、実行するのは“人”だから。
書類や制度が存在していても、それを使いこなす人が迷っていたり、知らなかったりすれば、意味を成しません。
たとえば、パートナーが自分の加入している保険内容を知らない、子どもが親の介護希望や持病を把握していない、緊急時に連絡すべき人の名前を家族が把握していない──そんな「情報の断絶」は、いざという時に大きな混乱を招きます。
「備えたつもり」が「活かせない現実」にならないためには、日々のコミュニケーションが欠かせません。
特に夫婦や家族で、定期的に「わが家の安心は、どこに不安があるか?」を点検する時間を持つことが大切です。
お金や制度という“見える備え”に加え、「気持ち」や「情報の共有」という“見えない備え”があってこそ、本当の安心は成り立ちます。
保険も制度も、“人”という媒介があって初めて活きるもの。だからこそ、つながりの質と量もまた、大切に育てていきたい備えなのです。
“備え”とは、「信頼できる誰かと、話しておくこと」
保険に入ることも、制度を調べることも、大切な備えの一部です。けれど、それ以上に大切なのは──その備えが“本当に機能する状態”を、信頼できる誰かと一緒に作っておくことではないでしょうか。
「いざというときの不安」は、どれだけお金があっても消えません。むしろ、不安を一人で抱えたまま情報だけを集め続けていると、かえって混乱したり、思考が止まってしまったりすることも。
だからこそ、“話せる相手”がいることが、何よりの備えになるのです。
保険や制度だけでは手が届かない、「暮らしと感情の安心」。それは、誰かと共有し、言葉にし、整理していくプロセスのなかで育まれていきます。
不安を感じるのは、悪いことではありません。
その不安とどう向き合い、どう支え合うか。その問いこそが、わたしたちの暮らしを根っこから整えていく力になります。
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