
相続直後は「14日」「3か月(熟慮期間)」「4か月(準確定申告)」「10か月(相続税)」の4つの時間軸で管理すると、抜け漏れを防げます。この記事では、実務の順番と期限の運用ポイントをまとめました。
※本記事は一般的情報です。個別の事情は自治体・税務署・家庭裁判所・年金機関・金融機関・専門家へ必ずご確認ください。
最初の14日
- 死亡届(7日以内)・火葬許可
- 年金・カード・携帯・サブスクの停止
- 戸籍収集の着手/資産・負債のラフ把握
3か月(熟慮期間)
- 単純承認/限定承認/相続放棄の選択
- 必要に応じて家庭裁判所へ延長申立て
4か月(準確定申告)
- 被相続人の所得税の申告(必要な場合)
- 納付・還付の整理/資金計画
10か月(相続税)
- 遺産分割協議・評価・特例の検討
- 相続税の申告・納付(必要な場合)
① 最初の14日:緊急手続と「止める・残す」の整理
- 死亡届(7日以内)→火葬許可:許可証がないと火葬できません。自治体窓口や葬儀社が案内します。
- 停止系:年金の受給停止・未支給年金の確認、カード・携帯・サブスク・公共料金・NHKなどの名義/解約。
- 仮整理:戸籍一式の収集に着手、金融・保険・証券・不動産・負債の存在把握、出入りは記録のみ残す。
※形見分け・処分は熟慮期間の判断後まで原則保留。資産の処分はトラブルの火種になります。
② 3か月(熟慮期間):承認/放棄を判断—延長の使い方
熟慮期間は、相続が開始したことを知った日から原則3か月。この間に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」を選びます。調査が間に合わない場合は家庭裁判所へ期限延長の申立てが可能です(利害関係人も可)。
延長申立てのポイント
- 期限内に申立て(原則)。
- 資産・負債の把握に時間を要する等、相当理由を説明。
- 起算日/家裁管轄/必要費用を事前確認。
よくある“延長が必要な事情”
- 金融機関・債権者が多数で照会に時間。
- 不動産が複数地域に点在/評価に時間。
- 被相続人の家計情報が断片的。
※延長が認められても、4か月(準確定申告)や10か月(相続税)の法定期限が自動で延びるわけではありません。別管理が必要です。
③ 4か月:準確定申告(必要な人のみ)
被相続人に確定申告が必要な所得がある場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、相続人等が「準確定申告」を行います(提出先は被相続人住所地の所轄税務署)。
- 対象例:事業・不動産・譲渡・一時所得、年収2,000万円超の給与など(ケースにより異なる)。
- 相続人代表の選任・付表の添付・納付/還付の手配も忘れずに。
- 年金受給停止・未支給年金の申請と並行して現金収支を整理。
④ 10か月:相続税の申告・納付(必要な場合)
相続税は、被相続人の死亡(通常は相続開始を知った日)翌日から10か月以内に申告・納付します。期限を過ぎると加算税・延滞税や特例不可などの不利益が生じます。
- 基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人(課税の要否が変動)。
- 配偶者の税額軽減・小規模宅地などの特例は申告が要件(0円でも申告が必要な場合あり)。
- 遺産分割協議・遺産目録・財産評価(不動産・有価証券等)は早めに着手。
マイルストーン表(コピペ可)
期日軸 | 主なToDo | メモ |
---|---|---|
〜7日/14日 | 死亡届→火葬許可、年金停止、カード・携帯・サブスク停止、戸籍収集の着手 | 死亡届は7日以内。故人宛郵便は転送不可のため、送付元へ個別連絡。 |
〜3か月(熟慮期間) | 承認/限定承認/放棄の選択、必要なら延長申立て | 家裁で期間伸長可(申立人・費用・管轄に注意)。 |
〜4か月(準確定申告) | 被相続人の所得税申告(必要時)・納付/還付 | 相続開始を知った翌日から4か月以内。 |
〜10か月(相続税) | 目録・評価・遺産分割協議→申告・納付 | 翌日から10か月以内。特例は申告が要件。 |
よくある“期限リスク”と回避策
- 熟慮期間と税務期限を混同:熟慮期間の延長=税務期限延長ではありません。別々に管理。
- 戸籍・資料収集が遅延:金融照会・不動産評価が難航しそうなら、早めに家裁へ延長申立て。
- 年金停止や未支給年金の失念:過払発生や還付遅延の原因。早期連絡を。
まとめ:4つの時間軸で“やるべき順番”を管理する
14日で「止める・整える」、3か月で「承認/放棄を決める」、4か月で「準確定申告」、10か月で「相続税」。この順番で進めると、家計の安全と選択肢を守れます。迷ったら熟慮期間の延長申立ても検討し、税務の期限は別管理でカレンダー化しましょう。