はじめに──収入の“もしも”から暮らしを守る

経済がゆれやすい今、収入の安定は家計の土台そのもの。病気やケガで働けなくなったとき、固定費(住宅・教育・生活費)は待ってくれません。所得補償保険は、そんな時期のキャッシュフローの穴を小さな固定費(保険料)でならし、治療と回復に集中する余白をつくるための道具です。

ただし、保険は万能ではありません。会社員の傷病手当金や労災、貯蓄・予備費との役割分担が前提。まねTamaは、保険=山ならし/現金=初動対応/制度=土台/投資=将来の余白という視点で、“必要十分”の備えをやさしく整えます。

この記事でわかること

  • 所得補償保険のしくみ(待機期間・支払事由・職業定義)と、公的制度との役割分担
  • リスク管理として何をヘッジするか(短期欠勤/長期休業/部分就労/メンタル)
  • 選び方の要点(待機・給付期間・給付対象・給付額の決め方・インフレ耐性)
  • 向いている/向いていないケース、加入中の点検と請求動線の整え方

次のセクションでは、まず所得補償保険の基本から、暮らしの目線でやさしく整理していきます。

所得補償保険の基本

しくみ(待機期間/支払事由/職業定義)

所得補償保険は、病気・ケガで“業務に就けない”期間の収入の穴を埋める保険です。給付の可否は、いつから・どんな状態なら・どの範囲の仕事ができないときに支払うかという定義で決まります。

  • 待機期間(免責):発症・事故から◯日目以降など、最初の短期欠勤は対象外にする期間。短いほど保険料は高め。
  • 支払事由:医師の証明・治療の必要性・就業不能の判定方法(自職務の可否か、同等職務の可否か など)。
  • 職業定義自分の今の職務ができないときに支払うタイプと、他の職務も含め働けるなら対象外とするタイプがある(後者ほど厳しめ)。

給付の設計(定額・所得比例/部分就業・復職サポート)

設計の軸は「いくら・どれくらいの期間・どんな就労状態で」受け取れるか。最近は部分就業復職の過渡期も想定した商品が増えています。

  • 給付形態:毎月の定額または所得比例。税・社会保険の取り扱いを踏まえ、手取りベースで考えるのがコツ。
  • 給付期間有期型(例:1年・2年) or 長期型。長いほど保険料は上がるため、他制度との併用を前提に最小限で。
  • 部分就業・リハビリ就労:時短・軽作業で復職した場合の減額支給継続支給の条件を確認。
  • メンタルの扱い:うつ等の精神疾患が対象か、待機・支給期間・再発時の条件が別枠かを要チェック。

公的制度との役割分担(傷病手当金・労災・障害年金)

いきなり保険で全額を埋めるのではなく、公的制度=土台を先に確認し、不足分だけを保険でならすのがまねTama流です。

  • 傷病手当金(会社員等):給与の一部を最長一定期間補填(条件あり)。待機・支給率・支給期間を確認。
  • 労災保険:業務上・通勤災害は別枠の補償。業務外は対象外のため、所得補償と役割を分ける。
  • 障害年金:長期・重度の場合の生活の土台。認定基準・等級は別途ルール。

ミニ用語メモ

  • 待機期間:支給開始までの対象外期間。短いほど保険料高。
  • 自職務基準現在の職務ができなければ支給されやすい定義。
  • 同等職務基準:他の職務が可能なら対象外になりやすい、厳しめの定義。
  • 部分就業給付:時短・軽作業で復職しながら、不足分を一部補填する仕組み。

クイック自己診断(はい/いいえ)

  • 勤務先の傷病手当金の条件(支給率・期間・待機)を把握している。
  • 保険の待機期間給付期間が、家計の固定費と合っている。
  • 職業定義(自職務/同等職務)の違いと、メンタルの扱いを約款で確認した。
  • 部分就業時の減額・継続支給の条件を理解している。

まとめると、所得補償は短期〜中期の収入ギャップをならす専門ツール。次のセクションでは、リスク管理としての位置づけを深掘りし、どんな“山”をどう平準化するかを整理します。

リスク管理としての位置づけ

何をヘッジするのか(短期欠勤/長期休業/部分就労/メンタル不調)

所得補償保険は、収入の「谷」を小さな固定費でならすための道具です。想定しておきたいのは次の4パターン。

  • 短期欠勤(〜1か月):通院・安静で一時的に働けない。現金の予備費で初動対応し、待機期間はやや長めでも可。
  • 中〜長期休業(数か月〜):治療・リハビリで収入が細る時期。毎月の不足を所得補償で平準化。
  • 部分就労(時短・軽作業):復職の過渡期。減額支給や継続支給に対応する設計か要確認。
  • メンタル不調:対象外や支給期間短縮の特別条件があり得るため、約款で扱いを先に確認。

家計キャッシュフローの“山”と平準化(固定費・教育・住宅)

欠勤が続くと、住宅・教育・生活費などの固定費が重く感じられます。次の手順で“山ならし”を設計しましょう。

  1. 不足額を出す:毎月の手取り予定 −(公的給付や会社制度)=毎月の不足
  2. 待機期間で分担:待機期間=現金待機明け〜回復まで=保険で役割分担。
  3. 固定費の圧迫点を特定:住宅ローン・家賃、教育費、通信・保険など。一時的な圧縮余地も検討。
  4. 給付期間を仮置き:主治医の見立て+余裕をみて6〜12か月など保守的に。

設計のコツ(待機×給付×金額の三点合わせ)

  • 待機期間:予備費の厚みに合わせて30/60/90日などを選択。予備費が薄いほど短めが安心。
  • 給付期間:有期(例:1年)を基本に、長期化リスクが高い職種・持病・再発可能性があるなら延長を検討。
  • 給付額:毎月の不足の半分〜7割を目安に。満額を保険で埋めようとすると固定費が重くなる。
  • 部分就労:時短復帰時の減額支給条件がある商品は回復期に相性◎。

かんたん算式(メモに転記して使えます)

毎月の不足 = 固定費+変動費(公的給付+会社制度+部分就労収入)

保険の給付額(目安)= 毎月の不足 × 0.5〜0.7

クイック自己診断(はい/いいえ)

  • 待機期間は現金予備費でカバーできる日数に設定している。
  • 毎月の不足を概算し、給付額は半分〜7割に留めて固定費を太らせていない。
  • メンタル不調・部分就労の取扱いを約款で確認した。
  • 住宅・教育など圧縮しにくい固定費の当面の対応策を決めている。

ここまで整えば、所得補償は治療に専念する余白をつくる心強い味方に。次のセクションでは、所得補償保険の選び方(待機・給付期間・給付対象・金額・インフレ耐性)を具体的に整理します。

所得補償保険の選び方

待機期間と給付期間の設計(短期 vs 長期)

まずは「いつから・いつまで」支えるかを決めます。ここが家計のブレを左右します。

  • 待機期間(免責)の置き方現金予備費や勤務先の有給・病休・傷病手当金の開始時期に合わせ、30/60/90日などを選択。自営業・フリーランスは短めが安心。
  • 給付期間の置き方:有期(例:6〜12か月)を基本に、再発・長期化の懸念が高い場合のみ延長。長いほど保険料は上がるため、まずは最小限から。
  • 段階設計短めの待機+有期給付で回るかを起点に、必要に応じて延長・増額を検討(年1回の見直し前提)。

給付対象の読み解き(職業定義・部分就業・精神疾患の扱い)

パンフの見出しより、約款の定義が現実の支払いを左右します。ここは丁寧に。

  • 職業定義自職務ができないとき支給のタイプは現場に沿いやすい。一方、同等職務ができれば対象外は厳しめ。部署異動・軽作業の扱いも要確認。
  • 部分就業:時短・リハビリ就労時の減額支給/継続支給条件。復職の過渡期に影響が大きいポイント。
  • 精神疾患:対象外や支給期間の短縮・待機延長などの特別条件がある商品も。再発時の扱いも確認。
  • その他の除外:妊娠・出産関連、自損行為、既往症の扱いなど、対象外・条件付きの範囲を先に把握。

給付額の目安(手取り基準/他制度との調整/税の視点)

満額を保険で埋めようとすると固定費が重くなります。不足の一部を平準化する発想で。

  • 手取りベース毎月の不足=生活固定費+変動費−(公的給付・勤務先制度・部分就労収入)。給付額はこの50〜70%を目安に。
  • 制度との整合:会社員は傷病手当金、労災該当の有無、ボーナス・手当の減少も見込み、重複と不足を突き合わせ。
  • 税・社会保険の取り扱い商品・契約形態により異なるため、手取りにどう効くかを販売会社・税務の最新情報で確認。
  • 合算上限:就労収入や他給付と合わせたときの給付調整(上限)規定がないか要チェック。

保険料とインフレ耐性(固定額の目減り、見直し前提)

  • 固定額の目減り:給付が固定だと物価上昇で実質目減り。増額可否・更新時の調整余地を確認。
  • 総保険料の見える化:医療・生命・損保と合わせた固定費の合計が家計を圧迫しないか。特約の積みすぎに注意。
  • 見直しの習慣:年1回、収入・固定費・制度変更に合わせて待機・期間・金額を微調整。少なく始めて整える方針が続けやすい。

見積もり比較チェックリスト(保存版)

  • 待機期間:30/60/90日など、現金予備費・勤務先制度と整合している。
  • 給付期間:6〜12か月を起点に、長期化リスクが高ければ延長検討。
  • 職業定義:自職務/同等職務の違い、配置転換の扱いを確認。
  • 部分就業・メンタル:減額/継続支給・特別条件・再発の条項を把握。
  • 給付額:不足×0.5〜0.7で設定。合算上限・税/社保の取り扱いを確認。
  • 総保険料:他保険との合計で固定費が太りすぎていない

クイック自己診断(はい/いいえ)

  • 待機期間は予備費+勤務先制度でカバーできる日数に合わせた。
  • 給付額は毎月の不足の50〜70%に留め、固定費を重くしていない。
  • 自職務/同等職務・部分就業・メンタルの約款条項を確認済み。
  • 年1回の見直し(収入・固定費・制度変更)をカレンダーに入れた。

次のセクションでは、向いているケース/向いていないケースを整理し、わが家に合う判断のヒントをまとめます。

向いているケース/向いていないケース

向いているケース──“収入の谷”を平準化したいとき

  • 固定費が大きく現金クッションが薄い:住宅ローン・教育費などの支払いが重く、数か月の欠勤で家計が崩れやすい
  • 自営業・フリーランス傷病手当金がない/薄いため、休む=収入停止のリスクが高い。
  • 専門職・肉体労働など“自職務”が不可だと代替しづらい自職務基準の約款と相性が良い。
  • 復職が段階的になりやすい働き方:時短/軽作業の部分就業給付が活きる。
  • メンタル不調リスクを意識している対象・支給期間の条件を確認のうえ、家計の谷を小さくしたい。
  • 単独稼ぎ手(大黒柱):家計の収入源が一人に集中しており、欠勤の影響が大きい。

向いていないケース──“制度+現金”で回せるとき

  • 生活防衛費・予備費が十分待機期間+数か月の不足を現金で吸収でき、固定費(保険料)を増やしたくない。
  • 勤務先の制度が厚い傷病手当金・企業の上乗せ・GLTD(団体長期障害)などでカバーされ、重複が多い。
  • 収入依存度が低い:家計が投資収入・年金・配偶者収入で成り立ち、本人の就労収入の比重が小さい。
  • 短期欠勤が中心で有給等で回る:欠勤は数日〜数週間が想定、待機期間内で完結することが多い。
  • 他の保険と重複:就業不能保険などで同じ“収入の谷”を既にヘッジしている。
  • (注意)対象外の働き方:保険の約款上、被保険者要件や職種要件に該当しない場合は加入自体が不可。

クイック自己診断(はい/いいえ)

  • 待機期間を超える欠勤が続いた場合、毎月の不足を現金だけで3か月以上カバーできない。
  • 自営業/フリーで傷病手当金がない、または勤務先制度だけでは不足が大きい。
  • 復職は時短や段階的になりそうで、部分就業給付があると安心だ。
  • 住宅・教育など圧縮しにくい固定費が当面続く。
  • 自職務/同等職務・メンタルの約款条項を確認し、家計に合う商品が見つかりそうだ。

「はい」が多いほど、所得補償保険を“必要十分”の水準で持つ価値が高いサインです。次のセクションでは、加入中の点検ポイント(免責・再発・復職時の条項/重複の整理/請求動線)を具体的に確認します。

加入中の点検ポイント

免責・再発・復職時の調整条項(“効くときに効く”を確認)

  • 待機期間(免責)30/60/90日など現在の設定が、現金予備費+勤務先制度でカバーできる日数と合っているか。
  • 再発・再支給:同一傷病の再発時の取扱い(支給対象か/待機のリセット有無/合算上限)を約款で確認。
  • 復職・部分就業:時短・軽作業での減額支給継続支給の条件。試し出勤配置転換の扱いも要チェック。
  • メンタル不調:うつ等の支給期間上限・待機延長・再発の特別条件がないか。

勤務先制度・他保険との重複(ムダを削って“核”を残す)

  • 勤務先制度傷病手当金・会社の上乗せ・GLTD(団体長期障害)の有無と開始時期/支給率/期間。
  • 他の保険:就業不能保険・医療保険の収入補填系給付合算上限の規定を突合。
  • 最適化の順番:①重複を把握 → ②所得補償は不足の50〜70%に調整 → ③特約を整理。

請求動線(書類・期限・連絡先)を整える

  • 必要書類:医師の証明、就業不能の証明、勤務先の賃金台帳・出勤簿、支給決定通知(傷病手当金等)。
  • 期限と手順請求期限(時効)定期的な継続証明の提出サイクルをメモ化。
  • 連絡先の共有:保険会社の窓口・アプリ、担当者、家族が代理で手続きする手順を同じフォルダに。

保険料と家計のバランス(固定費が太りすぎないか)

  • 総保険料の見える化:生命・医療・損保・介護と合算し、手取り比で確認。重い場合は特約を優先度順にスリム化。
  • インフレ耐性:固定額給付は物価上昇で目減り年1回の水準見直しや増額オプションの可否を確認。
  • 家計イベントとの整合:教育・住宅など圧縮しづらい固定費の山と、給付期間の整合をチェック。

5分セルフチェック(はい/いいえ)

  • 待機期間は現金+勤務先制度で無理なくカバーできる。
  • 再発・部分就業・メンタルの取扱い条項を約款で確認した。
  • 勤務先制度/就業不能保険との重複を整理し、不足の50〜70%に給付を調整した。
  • 請求書類・期限・窓口情報を家族と共有している。
  • 総保険料は家計を圧迫せず、年1回の見直し予定をカレンダーに入れた。

見直しは“やめる/増やす”だけではありません。核(不足の50〜70%)を守り、重複を削り、請求動線を整える——この小さな調整が、治療に専念できる余白を生みます。次のセクションでは、全体のまとめと今日からできる3ステップをご紹介します。

まとめ──“必要十分”で、治療に専念できる余白をつくる

所得補償保険は、欠勤で生じる収入の谷を小さな固定費でならす専用ツールです。万能を目指すより、不足の一部だけを平準化し、公的制度=土台/現金=初動/保険=ならしの役割分担で整えると、家計と心の負担が軽くなります。

今日からできる3ステップ

  1. 見える化:勤務先制度(傷病手当金・上乗せ等)の開始時期・支給率を確認し、毎月の不足(固定費+変動費−各種給付)をメモで概算。
  2. 設計:待機=現金、待機明け〜回復=保険で役割分担。給付額は不足の50〜70%、給付期間は6〜12か月から保守的に仮置き。
  3. 動線づくり:医師の証明・賃金台帳・出勤簿などの請求書類リスト保険会社・人事の連絡先を家族と共有。部分就業時の取扱いも約款でチェック。

よくあるつまずきと回避策

  • 満額で埋めようとして固定費が肥大:給付額は不足の半分〜7割に。年1回の見直しで微調整。
  • 約款の見落とし:自職務/同等職務・メンタル・再発・部分就業の条項を先に確認。
  • 待機と現金のミスマッチ:予備費の厚みに合わせて30/60/90日を選ぶ。
  • 制度とのダブり:傷病手当金やGLTDと合算上限・調整規定を突き合わせ、重複を整理。

情報は不安を増やすためではなく、選択肢を広げるためにあります。少なく始めて、年1回整える。そのリズムで、治療と回復に集中できる余白をつくっていきましょう。

スターターキットで“収入の谷”対策を見える化

チェックリストとワークで、毎月の不足額の算出・待機期間/給付期間の設計・勤務先制度との突合までやさしく整理。
保険=ならし/現金=初動/制度=土台の役割分担で、わが家に合う“必要十分”の所得補償を整えましょう。


暮らしとお金の見える化スターターキット

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