不動産運用と税金──「思ったより残らない」を防ぐために
不動産運用では、家賃収入や売却益だけでなく税金の知識も欠かせません。
税金は毎年必ず発生するコストの一つであり、計画段階から見込んでおかないと「手元に残る金額」が大きく変わってしまいます。
固定資産税や都市計画税といった毎年の負担、家賃収入にかかる所得税、売却時の譲渡所得税──
税の種類は複数あり、それぞれ計算方法や納付時期が異なります。
この記事では、初心者でもわかる不動産運用と税金の基本を生活目線で解説します。
「どんな税金があるのか」「いつ、いくら払うのか」を整理し、安心して運用を続けるための第一歩にしましょう。
第1章:不動産運用で関わる主な税金の種類(日本)
まずは「どんな税金があるのか」を地図化しましょう。ここでは日本の一般的なケースを、生活目線でやさしく整理します。
1)毎年かかる税金
- 固定資産税:土地・建物の評価額に応じて毎年かかる税。
暮らしのポイント:例年4〜6月ごろに納税通知書が届きます。月割りで積立しておくと家計が安定。 - 都市計画税:市街化区域などで固定資産税と併せて課税。自治体により有無・税率が異なります。
- 住民税・所得税(家賃収入):賃貸で得た利益(不動産所得)に対して課税。
収入から必要経費(管理費、修繕費、減価償却、ローン利息の一部など)を差し引いた「利益」に税率がかかります。
2)購入時・名義変更時にかかる税金
- 不動産取得税:購入後、数か月〜1年以内に都道府県から納付書が届くのが一般的。
- 登録免許税:所有権移転登記・抵当権設定登記にかかる税金(引渡し時にまとめて)。
- 印紙税:売買契約書・金銭消費貸借契約書(ローン契約)に貼付する印紙代。
3)売却時にかかる税金
- 譲渡所得税・住民税:売却益(売却価格−取得費−譲渡費用)に対して課税。
暮らしのポイント:保有期間5年超は長期扱いで税率が低め、5年以下は短期で高めの税率になります。
4)消費税について
- 住居用の家賃は非課税が原則。
一方で、駐車場や事務所・店舗の賃貸は課税対象になることが多く、消費税の扱いが異なります。
5)確定申告のタイミング
- 賃貸運用:毎年2〜3月に確定申告(給与所得者でも必要なケースあり)。
- 売却益:売却した翌年の確定申告で申告・納税。
税金は「知らなかった」で済まされない固定コスト。
まずは種類と支払時期をカレンダー化し、毎月の家賃から税金・予備費を自動積立しておくと、急な資金手当てに慌てずに済みます。
※税率や軽減措置、控除の可否は物件の種類・所在地・時期・個人状況により異なります。最終判断は必ず自治体窓口や税理士にご確認ください。
第2章:家賃収入の税金計算はこう進む(不動産所得の基本)
家賃収入にかかる税金は、売上(家賃)−必要経費=不動産所得を求め、その利益に対して所得税・住民税がかかる仕組みです。
ここでは、生活目線で「何が経費になるの? どう計算するの?」を整理します。
1)必要経費になる主なもの
- 管理費・修繕積立金(区分マンション)
- 固定資産税・都市計画税(按分してその年の分)
- 保険料(火災・地震など、対象期間分を計上)
- 減価償却費(建物・設備の購入費を耐用年数で按分)
- ローン利息(元本返済は経費にならない点に注意)
- 賃貸管理委託料・広告費・仲介手数料(入居募集や更新に伴う費用)
- 修繕費(原状回復や小修理など。資産価値を高める大規模な改良は「資本的支出」として償却対象になりうる)
- 水道光熱費・消耗品・交通通信費(事業関連分のみ・按分が必要)
- 税理士報酬・司法書士報酬 などの専門家費用
2)減価償却の超ざっくりイメージ
建物や設備は長く使う資産なので、購入年に全額経費にできません。
建物価格(土地は減価償却しない)を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費化します。
- 区分マンションの購入代金を「土地:建物」に按分(売買契約書・固定資産税評価などで確認)。
- 建物部分に法定耐用年数・償却率を適用して毎年の償却費を算出。
- エアコン・給湯器など附属設備は耐用年数が異なるため別管理。
3)ミニ計算例(概念把握用)
年間家賃収入:96万円(月8万円)/ 経費:管理費・修繕積立15.6万円、固定資産税10万円、管理委託4.8万円、保険1.5万円、減価償却18万円、修繕5万円、ローン利息20万円 → 合計75.9万円
不動産所得:96万円 − 75.9万円 = 20.1万円(概算)
※この利益に所得税・住民税が課税(他の所得と合算)。元本返済は経費にならない点に注意。
4)青色申告のメリット(個人の場合)
- 青色申告特別控除:要件を満たせば最大65万円(または10万円)の控除。
- 専従者給与:家族の手伝いへ適正額の給与計上が可能(要件あり)。
- 赤字の繰越控除:一定要件で損失の繰越が可能。
※青色申告は帳簿付けや届出が必要。ハードルはあるものの、節税・資金繰りの安定化に効果的です。
5)損益通算の考え方(注意点)
不動産所得が赤字の場合、他の所得と通算できる場合がありますが、
減価償却過大・土地取得関連利息などは制限の対象になることも。個別要件の確認が不可欠です。
迷ったら、「これはその年の収益獲得に直接必要だったか?」を基準に考えると整理しやすくなります。最終判断は税理士・自治体窓口へ。
第4章:税金を見越した資金計画の立て方
不動産運用では、「利益が出た=手元に残る」ではないという点を忘れがちです。
固定資産税や所得税、売却時の譲渡所得税など、税金は運用の収支に直結します。
1)家賃収入の何割かを税金用に確保
毎月の家賃収入から10〜20%程度を税金・修繕費の積立口座へ自動振替するのがおすすめです。
「気づいたら使ってしまった」という事態を防ぎ、納税時期に慌てることがなくなります。
2)年間の納税スケジュールを把握
- 固定資産税・都市計画税:年4回納付(自治体によって年1回一括も可)
- 所得税:翌年2〜3月に確定申告・納税
- 住民税:年4回納付(給与天引きの特別徴収も可)
- 売却時の譲渡所得税:売却翌年に申告・納税
3)ローン返済と税金のダブル負担に注意
ローン返済額と税金支出が重なると、一時的に資金繰りが厳しくなる場合があります。
購入前に「返済額+予想税額」を含めたシミュレーションを必ず行いましょう。
4)節税策を事前に検討
- 青色申告による特別控除や専従者給与の活用
- 経費計上の抜け漏れ防止(領収書・明細の整理)
- 大規模修繕や設備更新の時期を計画的に
5)生活資金との線引きを明確に
家計と不動産運用の口座を分けることで、運用状況が一目で把握でき、税金や修繕費の原資を確保しやすくなります。
「生活費を運用に回してしまう」リスクも防げます。
税金は避けられませんが、「いつ・いくら」を把握し、先に確保しておくことで、不安や急な出費をぐっと減らすことができます。
まとめ:税金知識は「利益を守る防具」になる
不動産運用は、家賃収入や売却益を「増やすこと」ばかりに目が行きがちですが、税金を含めた収支管理ができてこそ、手元に残せる資金が安定します。
固定資産税や所得税、譲渡所得税などの支払いは避けられないものだからこそ、計画の段階で組み込むことが大切です。
税金知識は難しそうに見えますが、生活目線で「いつ・いくら・なぜかかるのか」を押さえれば十分。
あとは記録と準備を続けるだけで、運用中の安心感が大きく変わります。
そして、税金は単なるコストではなく、「利益を守るための防具」と考えてみましょう。
知っていれば避けられる損失、減らせる負担が必ずあります。
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