立地・需要・家賃相場の調べ方──「貸せる物件」を見極める第一歩
不動産運用の成否を左右する最大の要因は立地です。
どんなに内装がきれいで価格が手ごろでも、立地条件が悪ければ入居者がつかず、空室リスクが高まります。
立地の良し悪しは、ただ「駅から近い」「人気エリア」という単純な条件だけでは決まりません。
近くにどんな人が住んでいるのか、どのくらい賃貸需要があるのか、相場はどれくらいか──こうした情報を総合的に見る必要があります。
この記事では、初心者でもできる立地・需要・家賃相場の調べ方を、生活目線の具体例を交えて紹介します。
「なんとなく良さそう」で選ばず、数字と事実で安心できる物件を選びましょう。
第1章:立地条件を生活者目線でチェックする
地図や数値だけでは見えない「住み心地」が、入居の決め手になります。まずは入居者になったつもりで、
日常の動線を具体的にたどってみましょう。
1)駅・バス・主要動線
- 駅徒歩分数:実歩で確認(信号・坂・階段を含めた体感距離)。
- バス便:本数・始発終発・雨天時の混雑。主要駅までの所要時間。
- 自転車動線:駐輪場の有無・ルール・坂の勾配。
2)生活インフラ(毎日の便利さ)
- 買い物:スーパー・ドラッグストア・コンビニの距離と営業時間。
- 医療・公共:内科・小児科・歯科、役所、郵便・宅配ボックスの利便。
- 飲食・公園:夜の明るさや騒音、子育て世帯の使い勝手。
3)安全・静音・匂い
- 夜間の明るさ:帰宅ルートの街灯・人通り。
- 騒音源:幹線道路・線路・飲食店・工場。窓を開けた時の体感。
- におい・粉塵:飲食街・工場・ゴミ集積所・河川の近接。
- ハザード:水害・土砂の想定。念のため行政公開データを確認。
4)マイクロ立地(同じ駅でも差が出るポイント)
- 方角・採光:南東/南西・前面建物の高さ・日照時間。
- 階数・眺望:低層は虫・湿気、高層は風・エレベーター待ち。
- 建物配置:ゴミ置場・駐車場・共有部の位置と匂い/音の影響。
5)ターゲットとの適合
- 単身者向け:駅近・コンビニ/飲食充実・宅配利便・ネット回線速度。
- ファミリー向け:学校区・公園・大型スーパー・車動線・保育園空き状況。
- 学生向け:大学までの交通費/時間・自転車通学可否・周辺相場。
- 高齢者向け:病院距離・段差/エレベーター・緊急時動線。
6)将来性(じわっと効く要素)
- 再開発・新駅・路線増強:告知済み計画の有無とスケジュール。
- 人口動態・大口雇用:大学・病院・工場・オフィス集積の維持/転出入。
- 供給計画:周辺の新築大量供給で賃料が下がらないか。
クイックチェック(5項目で仮判定)
- 駅(または主要バス停)まで実歩10分以内 or バス本数が十分。
- 24時間系を含む買い物導線が10分圏に2か所以上。
- 夜間の帰宅ルートが明るく人通りあり、坂・階段が少ない。
- ターゲット(単身/ファミリー等)の生活利便が噛み合っている。
- 近1年の周辺募集賃料と比べて、勝てる特徴が1つ以上ある(駅距離/広さ/設備/日当たり等)。
立地は「駅距離=すべて」ではありません。
生活の快適さ×ターゲット適合×将来の供給/需要を三点セットで見ると、空室に強い物件が選べます。
第2章:需要を読み解くシンプルな方法
どんなに立地が良くても、周辺に「借りたい人」が少なければ成り立ちません。
需要を把握することで、空室リスクや賃料下落の予測がしやすくなります。
1)人口動態を見る
- 自治体の人口統計:増加傾向か減少傾向かを確認。
- 年齢別人口:学生・子育て世代・高齢者、どの層が多いかを把握。
- 転入・転出数:流動性の高さは賃貸需要の目安になります。
2)雇用・学校の集積
- 大学・専門学校:学生向け需要の有無。
- 大手企業・工場・病院:単身赴任者や職員の賃貸需要。
- 商業施設:従業員層の住まいニーズ。
3)賃貸ポータルでの検索件数
SUUMOやアットホームなどで、エリア名+間取り条件で検索。
ヒット件数や閲覧数の多い物件は、需要が高い傾向にあります。
4)募集スピードのチェック
気になるエリアの物件が、掲載から何日で「成約済」になるかを観察。
短期間で消える物件が多いエリアは、需要が高く回転率も良い証拠です。
5)現地での体感調査
- 平日と休日、昼と夜、それぞれの人通りを観察。
- 駅や商業施設での張り紙や広告の多さ(入居募集の活発さ)。
- 引っ越し業者のトラックや内見客の頻度。
需要の確認は机上の数字だけでなく、現場の空気感も大切です。
数字と現場感覚を組み合わせることで、より精度の高い判断ができます。
第3章:家賃相場の調べ方と使い方
家賃相場を把握することは、購入時の収益予測にも、運用中の賃料設定にも欠かせません。
高すぎれば空室が長引き、安すぎれば利益を逃します。
1)ポータルサイトでの比較
- SUUMO・アットホーム・HOME'Sなど複数サイトを活用。
- 同じエリア・築年数・間取り・面積で絞り込み。
- 家賃だけでなく、共益費や管理費も含めた「実質負担額」で比較。
2)成約事例をチェック
募集価格ではなく実際の成約家賃を確認することが重要です。
不動産会社に聞くほか、レインズ(業者間データ)や自治体の公表データで確認できる場合もあります。
3)過去数年の推移を調べる
家賃相場が安定しているか、下落傾向にあるかを把握します。
新築物件の大量供給や人口減少があると、数年単位で下がることがあります。
4)賃料設定の基本
- 周辺相場の95〜100%に設定すると内見が入りやすい。
- 競合物件に勝てる特徴(設備・日当たり・内装)をアピールポイントに。
- 空室が長引く場合は、家賃ダウンより先に「付加価値アップ」を検討。
5)シミュレーションに反映
家賃相場は、運用シミュレーションの収入部分の根拠になります。
「希望額」ではなく「市場が受け入れる額」をベースに計算することで、計画倒れを防げます。
家賃相場は常に変動します。
年に1回は改めて調査し、収益性やターゲットへの訴求力を見直す習慣をつけましょう。
まとめ:数字と現場感の両方で見極めよう
不動産運用の成否は、立地・需要・家賃相場の3つが大きく影響します。
どれか1つでも見誤ると、空室や収益減のリスクが高まります。
大切なのは、机上のデータだけでなく実際に歩いて感じる現場感を組み合わせること。
駅からの道のり、周辺のにおいや騒音、人の流れなど、数字ではわからない要素が入居者の満足度を左右します。
そして家賃相場は、希望や理想ではなく「市場が受け入れる価格」を基準にすることが安定運用の近道です。
立地条件を生活目線で確認し、需要を数字で裏づけし、家賃相場で計画を精密化──
この流れを押さえれば、初心者でも安心して一歩を踏み出せます。
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