お金を増やすにはどうすればいい?──節約だけに頼らない、安心して考える運用の基本

節約や収入アップだけじゃ、なかなか増えない?

「お金をもっと増やしたい」と思ったとき、まず思い浮かぶのは「節約」や「収入アップ」かもしれません。
たしかに支出を抑える工夫や、副業などで収入源を増やすことは、家計を助ける力になります。

でも、どちらにも限界があります。
たとえば節約。一定以上の支出を削るには、生活の質を下げることにもつながりかねません。
また、収入アップも簡単に叶うものではなく、時間や労力、家庭とのバランスを考えると、すぐには実現できないケースも多いでしょう。

そんななかで注目されるのが「お金の運用」です。
ただ貯めるのではなく、お金自身に“働いてもらう”ことで、将来に向けたゆとりを育てていく考え方です。

とはいえ、「投資って怖い」「難しそう」というイメージが先に立つこともありますよね。
そこでこの記事では、やみくもに始めるのではなく、まずは“お金をどう増やすか”の基本的な考え方から丁寧に整理していきます。

じつは、お金を「増やす」ことと「守る」ことは、表裏一体の関係にあります。
そして、それを自分や家族の暮らしにあわせて無理なく活かすには、ちょっとした整理と視点の持ち方が鍵になります。

大切なのは、「何のために、いつ使うお金なのか?」という目的を明確にすること。
それがわかれば、お金を安心して動かしやすくなり、無理のない形で未来の準備を始めることができます。

「増やす」と「守る」──その前に考えておきたいこと

「お金を増やしたい」と思ったとき、多くの人がまず思い浮かべるのが「投資」や「資産運用」です。
確かに、お金に働いてもらうという視点は、長期的な家計の安定や将来への備えとしてとても有効です。
けれど、いざ運用を始めてみたものの、うまくいかなかったり、思ったよりもお金が増えなかったりすることもあります。

その理由の多くは、そもそも「目的」があいまいなまま運用を始めてしまっていることにあります。
お金は「増やす」だけではなく、「守る」ことも同じくらい大切です。
そして、なにより先に考えるべきなのが、「何のために増やすのか?」「いつ、どれくらい必要になるのか?」という“使い道”のイメージです。

目的のないお金は、増えたとしても簡単に使ってしまいやすく、時に浪費につながることもあります。
反対に、「この時期にこの目的で使いたい」という明確な意図があると、運用も管理も自然と意味のあるものになります。

たとえば、3年後の子どもの進学費用10年後の住宅購入資金、あるいは老後の備えなど。
それぞれの目的によって、必要な金額も、必要なタイミングも、リスクの許容度も異なってきます。

つまり、お金の「役割」を分けてあげることが大切なのです。
日常で使うお金、将来確実に必要になるお金、もしものための予備資金、そして余裕があるときに運用に回せるお金──。
このように分類しておくだけで、お金の使い方や守り方、増やし方がぐっと明確になります。

「増やす」と「守る」をバランスよく考えるためには、“使う目的”を起点に、お金を整理することから始めるのがポイントです。
そして、それぞれのお金に合った方法で運用や管理をしていくことが、将来の安心につながります。

次の章では、その具体的な方法として「お金の特性を見極める」視点──流動性・安全性・収益性という3つの軸について見ていきましょう。

お金の特性を見分けよう──流動性・安全性・収益性のバランス

「増やす」「守る」という考え方をより現実的にするためには、お金の持つ“特性”を理解することが大切です。
なぜなら、どんなお金にも“性質”があり、その性質に合った使い方や預け方をすることで、無理なく安心して運用できるようになるからです。

この章で紹介するのは、「流動性・安全性・収益性」という3つの軸。
金融商品はこの3つの性質をすべて完璧に備えているものは存在せず、どこかを重視すれば他のどこかを犠牲にする必要があるという特徴があります。

たとえば、普通預金のようにすぐ引き出せて、安全性が高い商品は、反対にほとんどお金は増えません
一方で、投資信託や株式など収益性の高い商品は、元本割れなどのリスクも高くなります

こうした特徴を知らずに「なんとなく増えそうだから」と金融商品を選んでしまうと、いざという時に引き出せなかったり、想定外の損失が出たりすることも。

だからこそ、お金の使い道や時期に合わせて、性質ごとに整理・区分することが重要です。
たとえば、数年以内に使う予定の教育費は「流動性」と「安全性」を重視、
一方で、使うまでに10年以上ある老後資金は「収益性」を取り入れて育てていく、といった具合です。

このように、目的 × 特性でお金を配置することで、暮らしに沿ったバランスの良い資産形成が可能になります。
水の流れをせき止めてダムを作るように、貯める場所や流すタイミングをきちんと設計しておけば、必要なときに必要な分だけ、しっかり活用できるようになります。

次章からは、これら3つの特性について、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
まずは、日常生活にもっとも身近な「流動性」からです。

流動性──すぐ使えるお金は、安心につながる

「流動性」とは、お金の出し入れがどれだけスムーズにできるかという性質のことです。
つまり、「必要なときにすぐ現金化できるかどうか」が流動性の高さを判断するポイントになります。

子育て中の家庭では、急な出費が発生することも少なくありません。
たとえば、子どもの学校関連の費用や、家電の故障、医療費など…。
そんなとき、手元にすぐ使えるお金があるかどうかは、安心感に直結します。

代表的な流動性の高い金融商品としては、普通預金があります。
いつでも引き出せて、決済や送金にもすぐ使える。まさに日常使いのベースとなる資金です。
また、定期預金定額貯金も、やや制約はあるものの中途解約ができ、元本割れの心配がないため、比較的流動性が高い商品といえます。

他にも、MMF(マネー・マネジメント・ファンド)中期国債ファンドなど、一部の投資型商品も、条件を満たせばすぐに換金できるものがあります。
ただし、購入後30日以内は換金できないなどのルールがある商品もあるため、使う時期が決まっているお金には注意が必要です。

少しリスクは伴いますが、外貨預金なども一応流動性はあります。
為替の変動により元本割れのリスクはありますが、日本円への換金は比較的スムーズに行えます。

大切なのは、「どのお金を、いつ、何のために使うか」を明確にしたうえで、流動性を重視すべき資金をしっかり分けておくことです。
生活費や、数ヶ月以内に使う予定のあるお金は、流動性の高い場所に置いておきましょう。
一方で、長期的に使う予定のないお金まで流動性重視で管理してしまうと、「増やす」力を失ってしまうこともあります。

「いざというとき」に備えて、“すぐに使えるお金”があるという事実は、精神的な安心にもつながります。
次章では、もうひとつの大切な軸「安全性」について考えていきます。

安全性──“お金を守る”視点が未来を支える

運用について考えるとき、どうしても「いくら増えるか」「どれくらいのリターンが得られるか」といった“収益性”に目がいきがちです。
でも、お金を着実に育てていくには、減らさない工夫=安全性を見極めることも欠かせません。

安全性とはつまり、リスク(価格の変動や損失の可能性)がどれだけ小さいかを示す指標です。
安定していて、元本が保証されているような商品ほど、安全性が高いといえます。

たとえば、普通預金や定期預金などの預金商品は、銀行などの金融機関が元本と利息を保証してくれます。
さらに、預金保険制度によって1金融機関あたり元本1,000万円+利息分まで保護されているため、万が一の際にも安心感があります。

また、国が発行し利払いを保証している国債も、安全性の高い金融商品の代表格です。
信頼度の高い国が破綻するリスクは低いため、長期的な資金の一部を安心して預けられる手段として活用されています。

一方、株式やFX(外国為替証拠金取引)などは、価格の変動が日々大きく、安全性という点ではやや不安が残ります。
発行元の企業や為替市場の動向、さらには経済情勢により、想定以上に価値が上下する可能性があるためです。

安全性に影響を与えるリスクには、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 信用リスク:預金先や企業が経営破綻する可能性
  • 価格変動リスク:株価や為替などの値動きによる損失
  • 金利リスク:市場の金利変動によって債券価格などが下がるリスク

これらを踏まえると、「安全性が高い」と思っていた商品にも、見えにくいリスクが存在していることがわかります。
大切なのは、一つの場所に全てのお金を預けるのではなく、目的や時期に応じて分散して持つことです。

特に、子育てや老後など、確実に必要になる時期があるお金は、安全性を第一に考えましょう。
増やすことよりも、“減らさずに残しておく”ことが、家族の安心と生活の安定を支えてくれます。

次章では、もうひとつの重要な特性「収益性」──お金を増やす力について見ていきます。

収益性──“お金に働いてもらう”という考え方

「働いて得たお金を使わずに貯めておく」──これはとても大切な習慣ですが、貯めたお金を“さらに働かせる”という考え方も、これからの時代には欠かせない要素です。
この“お金に働いてもらう”ことを実現するキーワードが、収益性です。

収益性とは、どれくらいお金が増える可能性があるかという尺度です。
金融商品における収益の種類には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • キャピタルゲイン:購入価格よりも高い価格で売却して得る利益
  • インカムゲイン:利息・配当金・分配金など、保有中に得られる利益

この2つを合わせた利益額を、元手となる金額で割ったものが“リターン”です。
たとえば、100万円の投資で1年間に5万円の収益があれば、年利回りは5%となります。

ただし、高いリターンが期待できる商品は、同時にリスクも高くなる傾向があります。
株式や不動産投資、外貨建て商品などは、収益性は高くとも、元本割れのリスクがつきものです。

さらに忘れてはならないのが、インフレ(物価の上昇)による貨幣価値の目減りです。
たとえ預金していても、物価が上がっていけば、実質的に「お金の価値」は下がっていきます。
そのため、金利がほぼゼロの預金だけでは、長期的にお金を守れない時代になりつつあります。

そこで注目されるのが、インフレに強い資産への分散です。
たとえば、金(ゴールド)や商品指数に連動する投資信託、あるいはインフレ連動国債などが代表例です。
とはいえ、これらも相場によって上下するため、慎重に検討する必要があります。

収益性を高めることは、将来の安心材料を増やすことにもつながりますが、「増やすために生活が不安定になる」ようでは本末転倒です。
あくまで大切なのは、家計全体の中で“リスクをとってもいい部分”に限って運用を考えることです。

そしてその運用も、ライフプランに沿った目標・使う時期・金額を考慮したうえで、少しずつ組み合わせていくのが安心につながります。
最終章では、こうした「お金の使い道」に合わせた整理方法と、老後を含めた未来設計の視点をあらためて確認していきましょう。

老後資金の準備にも“特性のすみ分け”が活きてくる

お金の「流動性・安全性・収益性」という3つの特性を見てきましたが、これらをもっとも活かせる場面のひとつが「老後資金の準備」です。
老後というのは、使う金額が大きく、使う期間も長いという、人生でも特殊なタイミング。
だからこそ、ただ貯めるだけでなく、「どの特性のお金を、どんなバランスで準備するか」がとても重要になります。

まず前提として、老後資金には「確実に必要な金額」と「状況によって変動する金額」があります。
生活費や医療費などのベースになる支出は、安全性を重視して準備しておくべき部分です。
一方で、余裕資金や旅行・趣味などのゆとりある支出については、収益性も取り入れながら育てていく選択肢もあります。

とはいえ、収益性を重視しすぎると、元本割れのリスクやタイミングのズレで生活に影響が出てしまうことも。
特に、退職後すぐの数年は「現金化しやすい資金(=流動性)」を多めに持っておくと、安心して日々の暮らしを送ることができます。

また、現在の日本では「年金制度の不確実性」や「物価上昇リスク」など、外的な不安要素も増えています。
こうした時代だからこそ、「国の制度に頼りきるのではなく、自分で考えて準備していく」という視点がますます重要になっています。

ただし、将来に向けたお金の計画は、年齢や家庭環境、働ける期間、健康状態などによって大きく変わります。
“この通りにやれば大丈夫”という正解はありません。
大切なのは、自分や家族にとって必要な備えを、納得感を持って決めていくことです。

たとえば、収益性を期待して一部の資金を投資に回す場合には、「もし損失が出たとしても生活に支障がない」範囲にとどめておくこと。
また、退職金や相続など大きな資金が入る場合には、すぐに動かす前に一度「何に・いつ・どれくらい使うのか」を具体的に分けて考えてみることが重要です。

こうして、お金の「使う目的」と「特性のすみ分け」を丁寧に組み合わせることが、安心できる老後の第一歩になります。
次のまとめでは、今回の内容をふり返りつつ、暮らしのなかでできる小さな一歩についてもご紹介します。

お金の整理から、安心できる未来が見えてくる

「お金を増やしたい」と思ったとき、節約や収入アップだけでなく、「お金に働いてもらう」方法としての“運用”が選択肢に上がるようになりました。
でも、運用というと難しそうに感じたり、リスクが不安だったりするのも自然なことです。

だからこそ今回お伝えしたかったのは、「すぐに投資を始めよう」ではなく、「お金をどう分けて考えるか」という基本の視点です。

流動性・安全性・収益性。
この3つの性質を意識して、お金を“目的ごとにすみ分ける”ことで、今の安心と、将来のゆとりの両方をバランスよく支えることができます。

特に子育て中のご家庭では、家計も教育費も老後資金も、すべてが重なってきます。
そんななかでも、「このお金はすぐ使う用」「これは少し先のため」などと整理しておくことで、感覚的な不安も少しずつやわらぎます。

お金の管理や運用は、専門的な知識がないとできないものではありません。
「自分たちの暮らしにとって、なにが必要か?」を出発点にすれば、自然と必要な選択肢が見えてくるはずです。

まずは、自分の手元にあるお金を「使い道」で4つに分けてみましょう。

  • ① 日常生活に使うお金
  • ② 数年以内に使う予定のあるお金
  • ③ 緊急時の予備として置いておくお金
  • ④ 少しリスクを取って育ててみるお金

こうした整理をしてみるだけでも、家計への向き合い方が変わってきます。
そして、運用が必要な場合も、目的や金額をあらかじめ明確にしておけば、必要以上に不安にならずにすみます。

「お金のことを考えるのが怖い」「運用なんて自分には無理」──そう感じていた方ほど、
この“すみ分け”の考え方は、やさしく自分らしいお金の管理を始める第一歩になるはずです。


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