「住宅ローン控除、あと数年で終わるんだよな……」
そんなひとことが、ふとした会話の中に出てくる時期。
毎年の年末調整や確定申告で“おトクな制度”として実感してきた住宅ローン控除も、10年・13年という期限を迎えるとき、家計の感覚は少しずつ変わっていきます。

「そろそろ繰上返済した方がいいのかな?」「この家、ずっと住み続けるのが正解なのか…」──
そんな問いがよぎるのは、決して珍しいことではありません。

住宅ローン控除の終了は、単なる税制の変化ではなく、“今の住まい”と“これからの暮らし”を見直すタイミングにもなり得ます。
特に、子どもの成長、教育費の増加、老後資金の準備など、ライフステージの変化を迎える子育て世代にとっては、家という「資産」をどう扱うかが、将来の選択肢の広がりに直結するのです。

本記事では、「住宅ローン控除が終わる前後」をひとつの転機として捉え、
住み替えや売却の判断軸、将来を見据えた家計と不動産のバランスの整え方について、宅建士とFPの視点からやさしく解説していきます。

第1章:住宅ローン控除が終わると、家計にどんな影響がある?

毎年12月に送られてくる「住宅ローン控除の明細書」──年末残高の1%が所得税や住民税から還付・控除されるこの制度は、住宅を購入した多くの家庭にとって、目に見える“家計の支え”となってきました。
たとえば年末残高が2,000万円であれば、年間で20万円もの減税効果があるわけです。月額換算すれば、1万5,000円以上の“実質的な手取り増”とも言えるでしょう。

しかし、この控除はずっと続くものではありません。制度上の適用期間(10年または13年)が終わると、翌年からはこの恩恵がなくなります。
減税がなくなることで、「手取りが減った」「支出が増えた」という感覚に襲われるのも無理はありません。実際には収入が下がったわけではないのに、税負担が元に戻るだけで心理的には“家計が苦しくなった”と感じてしまうのです。

そしてここで重要なのが、「住宅ローン控除が終わった後、どうするか」という視点です。
単に制度の終了として受け止めるのではなく、今後の返済計画やライフステージの変化に合わせて、“出口戦略”を立てておくかどうかで、その家が「資産」になるか「負担」になるかが分かれます。

住宅ローン控除が終わるというのは、言い換えれば「家をどう活かすか?」を再評価する時期とも言えます。
今の住まいに住み続けるのか、それとも住み替えや売却も視野に入れるのか──
この章では、控除終了が家計に与える影響と、それにどう備えるべきかを解きほぐしていきます。

第2章:築年数が資産価値に与える影響──10年・15年の節目に考える

住宅の「価値」は、時間の経過とともにどう変化していくのでしょうか。これは多くの方が気にしつつも、実際には見落としがちなテーマです。
「住宅は資産」と言われる一方で、築年数の経過によって価値が目減りするのは避けられない現実でもあります。

たとえば戸建て住宅は、土地の価値が重視されやすく、建物部分は築20年を過ぎると評価がほぼゼロに近づくと言われます。
一方、マンションでは、管理状況や立地によって築15年・20年を超えても一定の価値を保つケースもあります。
しかし共通しているのは、築10年・15年あたりが価値の分岐点になりやすいということです。

また、築年数と同じくらい重要なのが「エリア特性」です。
人気の駅近エリアであれば多少古くても高値で売れる可能性がありますが、郊外や需要の少ない地域では、築浅でもなかなか買い手がつかないこともあります。
「築年数 × 立地 × 管理状況」──この掛け算が、将来的なリセール(売却)や賃貸活用の可否を大きく左右します。

住まいは単に「買って終わり」のものではありません。
将来、転勤や介護、家族構成の変化などで手放す可能性があるなら、「売れる時期」「貸せる条件」を見誤らないことがとても大切です。
築10年を超えたあたりでいったん立ち止まり、自分の家の資産価値がどう変化しているか──外からの目線で見直すことが、今後の選択肢を広げるカギとなります。

第3章:「教育費ピーク」と「住宅ローン後半」が重なるリスク

住宅を購入して10年、15年が経過した頃──ちょうどお子さんの進学が重なってくるご家庭も多いのではないでしょうか。
中学・高校・大学と、教育費のピークが訪れるタイミングは、実は住宅ローンの返済期間の後半とも重なりやすいのです。

教育費は年齢が上がるほど負担が大きくなり、大学進学となれば入学金や授業料、下宿費など一度に数百万円単位で支出が発生することも。
その一方で、住宅ローンは利息が先に多く支払われ、返済後半ほど「元本返済」が重くのしかかってくる構造になっています。

このタイミングで家計が圧迫されると、よく出てくる選択肢が「繰上返済をしておいた方がよかったのか?」「いや、むしろ手元資金を残しておくべきだったのでは?」という迷いです。
どちらが正解というわけではありませんが、「教育」と「住まい」の支出計画を一緒に見直す視点は必要不可欠です。

また、繰上返済にこだわりすぎるあまり、教育資金の備えが後手に回るリスクもあります。
一度使ったお金は戻せない以上、「今後どんな支出が控えているか」「どこまでなら安全に減らせるのか」を冷静に見極めることが重要です。

教育費と住宅費は、どちらも「人生の土台」となる大きな支出。だからこそ、それぞれ単体で見るのではなく、同じ時間軸で重なり合う点に注目することが、後悔しない判断につながります。

第4章:「住み替え」を資産形成に変えるという選択肢

「家は一生に一度の買い物」──そう思い込んでしまうと、いざ暮らしに合わなくなっても、「売るのはもったいない」「住み替えは失敗だ」と感じてしまう方も多いかもしれません。
けれど、住み替えは決して“後退”ではなく、むしろ家計を立て直すチャンスになることもあります

たとえば、ローン残債と現在の売却価格を冷静に比較し、「売却して身軽になる」選択肢。
長期ローンの負担が続くよりも、一度リセットすることで固定費が軽くなり、家計の自由度が高まるケースもあります。
特に、築10〜20年のタイミングは資産価値の見直しにちょうどよい節目でもあります。

また、住み替え先として、あえて賃貸を選ぶというのも一つの戦略です。
その分、浮いた資金を「投資用物件」や「子どもの教育資金」「将来の介護備え」へ回すといった選択肢も見えてきます。
所有=正解ではなく、住む場所とお金の使い方を再設計するという視点が重要になってくるのです。

「手放すこと」には勇気がいりますが、それは「失う」ことではなく「整える」こと。
本当に大切なのは、“どこに住んでいるか”ではなく、“どんな暮らしを実現できているか”です。

将来のライフスタイルを見据えたとき、「いまの家をどう活かすか・どう手放すか」を検討することは、資産形成にも直結します。
住まいを「持ち続ける資産」から、「戦略的に活かす資産」へと捉え直すことが、これからの住まい方には必要なのかもしれません。

第5章:“あと数年でローン控除が終わる”──その事実が、未来設計の起点になる

住宅ローン控除は、長い返済期間の中で得られる“数少ない還元”ともいえる制度です。
その恩恵が終わるタイミングは、暮らしの見直しにおいてひとつの転機になります。
毎年戻ってきていた数十万円が、ある年を境に「ゼロ」になる──その事実が、家計の流れ・気持ちの動き・未来への視野に少なからず影響を与えるのです。

だからこそ、“終わってから考える”のではなく、“終わる前に整えておく”ことが重要です。
金銭的な影響を最小限に抑えるだけでなく、「自分たちの暮らしにとって本当に必要なものは何か?」を問い直す機会にもなります。

「せっかく買ったのに、住み替えるなんて…」という気持ちは自然なものですが、
住み替え=失敗ではありません。
むしろ、それは戦略的な設計変更であり、「より納得できる暮らし方」へと進むための柔軟な選択肢のひとつです。

この先の教育費、家族の変化、老後資金──あらゆる視点から“未来の暮らし”を整えるために、
「住宅ローン控除が終わる前後」のタイミングをどう使うかが、大きな分岐点になっていきます。

もし今、なんとなく不安や違和感を感じているなら──
それは、「今の暮らしをもう一度見直すサイン」かもしれません。

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