その住まい、10年後の自分も心地いい?

「駅に近いから」「子どもの学校まで歩いて行けるから」「家賃がちょうどいいから」──住まいを選ぶとき、多くの人は“今の条件”をもとに判断します。

もちろん、それは大切な視点です。
でも、ふと立ち止まって考えてみてほしいのです。
その住まいは、5年後・10年後のあなたや家族にとっても、同じように「心地いい場所」だと言えるでしょうか?

暮らしは、思った以上に変化します。
子どもの成長、仕事の環境、家族構成や健康状態──それらの変化に合わせて、住まいも「柔らかくフィットするもの」であってほしい。
だからこそ、物件の条件や金額だけではなく、「これからの暮らし」まで見通した選び方が大切になってきます。

今回の記事では、家選びの判断軸を「損か得か」ではなく、「今と未来の自分たちが、どんな暮らしをしたいのか」から見つめなおしていきます。
子育て中の今だからこそ気づける、“暮らしの本音”にも耳を傾けながら──。

第1章:なぜ「今の条件」だけで選ぶと後悔するのか?

家を選ぶとき、多くの人がまず考えるのは「いま直面している事情」です。
たとえば、通勤時間の短縮、子どもの園や学校の通いやすさ、手が届く価格帯や月々の支払いの軽さ──いずれも日々の暮らしに直結する、とても大事な要素です。

しかし、「その家が10年後も変わらず“ちょうどいい”か?」という視点は、案外見落とされがちです。
子どもが成長すれば、学区や通学距離は変わります。
仕事も転職・異動・独立といった変化があるかもしれません。
今“ちょうどいい”と感じていた場所が、数年後には“どこか合わない”と感じてしまう──そんなケースは決して珍しくありません。

また、家選びのタイミングで見落とされがちなのが、「一度選んだら、簡単には変えられない」という現実です。
購入した場合であればローンや契約の問題、賃貸でも更新や引っ越しの手間と費用が大きなハードルになります。
結果として、「本当は変えたいけど変えられない」と思いながら、無理に暮らしを合わせ続ける状態に陥ることも。

こうした“じわじわとした違和感”は、心の余白や家族の関係性にも影響を与えます。
本来なら快適であるはずの家が、どこか窮屈に感じたり、暮らしに「合わせること」ばかりにエネルギーを使ってしまったり──そうなる前に、未来の変化を見越した選び方が必要なのです。

「今の条件」で選ぶことは悪いことではありません。
けれど、それだけに偏ってしまうと、後になって“思っていたのと違う”と感じるリスクが高まります。
だからこそ、「今」と「未来」、両方を視野に入れたバランス感覚が、後悔しない住まい選びの土台になります。

第3章:10年後の自分から逆算してみる

目の前にある「条件」や「家賃」「立地」だけで家を選ぼうとすると、視野がどうしても“今”に偏ってしまいます。
でも、暮らしというのは常に変わっていくもの。子どもの成長、仕事やライフスタイルの変化、健康状態──それらは数年単位で大きく動いていきます。

たとえば、今は子ども部屋が必要でも、10年後には巣立っているかもしれません。
通勤に便利だった場所も、在宅勤務や転職で必要なくなることも。
階段が当たり前だった家も、将来の身体の変化を考えると「少しきついな」と感じる可能性もあるでしょう。

こうした未来の変化を前提にして、「10年後の自分」がどんな暮らしをしていたいかを想像してみる。
それは、単なるシミュレーションではなく、今の選択を深めてくれる“問い”になります。

たとえば、こんな問いを自分に投げかけてみてください。

  • 10年後、子どもが独立したとき、家の広さや間取りはどうしたい?
  • 健康や年齢を考えたとき、階段のある家は将来的にどう感じそう?
  • 仕事の状況が変わったとき、今の場所に住み続けたいと思える?
  • 地域とのつながりや安全性、災害リスクへの備えは?

このように、10年後の視点から逆算してみることで、
今は見えていなかった「必要なもの」「優先すべきこと」が自然と浮かび上がってきます。

未来のことなんて正確にはわからない──確かにその通りです。
でも、“どうなっていたいか”という想像力を持つことで、住まいの選択に「納得感」が宿ります。
それは、変化に備える保険ではなく、「変化しても柔らかく暮らしていける自分」をつくるための視点なのです。

第4章:買う?借りる?という問いを“暮らし”の側から捉え直す

住まいについて考えるとき、多くの人が真っ先に悩むのが「買うか、借りるか」という選択です。
購入すれば資産になる、賃貸は家賃がもったいない──そんな言葉をよく耳にしますが、この問いはもう少し丁寧に扱うべきかもしれません。

というのも、「買う」「借りる」は経済的な選択というだけでなく、“暮らしの柔軟性”や“未来の身軽さ”にも深く関わってくるからです。
自分たちがどんなふうに暮らしていきたいか。変化をどう受け入れていきたいか。
それによって、どちらの選択が合っているかは大きく変わります。

たとえば、「買った家に一生住む」と思っていても、
子どもの進学、親の介護、転勤、ライフスタイルの変化などで、“住み替えたい”と思うタイミングが訪れるかもしれません。
そのとき、購入したことで「身動きが取りにくくなる」と感じる人も少なくないのです。

一方で、賃貸の暮らしにもメリットがあります。
引越しがしやすく、住まいを暮らしの変化に合わせて調整しやすい。
住宅ローンの重圧がないぶん、精神的に軽やかに暮らせる方もいます。

もちろん、家を買うことが悪いわけではありません。
「ここで根を張って暮らしたい」「家を育てるように手を入れていきたい」──そんな価値観を持っている方にとって、購入という選択はとても豊かなものになります。

大切なのは、「買うか借りるか」よりも先に、「どんな暮らしを育てていきたいか」という問いを自分に投げかけてみること。
経済的な損得だけでは見えてこない“暮らしの芯”を見つめることで、選択にぶれない軸が生まれます。

住まいは、単なる「場所」ではなく、日々を積み重ねていく“舞台”です。
だからこそ、その選択は「損か得か」ではなく、「納得できるかどうか」で考えてみる価値があります。

第5章:家を選ぶことは、「暮らしの価値観」を選び直すこと

家探しというと、多くの人が「条件に合う物件を探すこと」だと考えがちです。
たとえば、駅までの距離、築年数、家賃やローンの額、間取り、周辺環境──こうした条件を並べて、チェックボックスを埋めていくように選ぶ。
でも、住まいとは本来、それ以上の意味を持つ“暮らしの器”です。

家を選ぶということは、ただの「住む場所」を決めるのではなく、「どんな時間を、誰と、どう過ごしていきたいか」を描き直すことなのです。
子どもとの時間をどう過ごしたいか。
自分の働き方や休み方を、どう整えていきたいか。
家事や育児にどんな工夫を加えたいか──それらすべてが、住まいの形や空気感とつながっています。

たとえば、コンパクトだけれど動線が良い間取りの家なら、子育て中の慌ただしい日々にも、ほんの少し余白が生まれるかもしれません。
日当たりのいいリビングで朝食をとる時間が、子どもたちにとって「安心できる場所」として心に刻まれるかもしれません。

「家」という“かたち”を選ぶことは、「暮らし」という“あり方”を選ぶことでもあります。
だからこそ、物件のスペックや価格だけで決めてしまうのではなく、自分たちの価値観を丁寧に見つめ直す時間を持つことが大切なのです。

どんな空間にいると、自分は心が落ち着くのか。
家族にとって“暮らしやすさ”とはどんな状態なのか。
無理なく続けられる生活コストはどのくらいか。
こうした問いを一つひとつたどっていくことで、「自分たちにとってのちょうどよさ」が見えてきます。

そしてその“ちょうどよさ”は、誰かが決めた正解ではなく、暮らしの中からにじみ出てくる納得感に支えられています。
住まい選びは、そうした価値観の再構築を通して、「家を選ぶ自分」にも出会い直すプロセスなのかもしれません。

「家を選ぶ」という問いは、「これからの暮らし」を選びなおすこと

家探しは、ただ物件の条件を見比べる作業ではありません。
家族のかたち、暮らし方、未来の自分──それらすべてを映し出す「問い直し」のプロセスです。

今の暮らしにフィットするか、だけでなく、これからの変化にも“しなやかに寄り添える選び方”を大切にしてみませんか?


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