子育て世代が知っておきたい「金は今が買いどき?」──割安・割高に振り回されないための考え方

「金は今が買いどき?」──その前に立ち止まりたいこと

ニュースやSNSで「金価格が高騰」「今は割安水準」「○年ぶりの高値」といった見出しを目にすることが増えました。
子育て世代の方にとっても、「インフレ対策に金がいいらしい」「老後の備えとして金を持っておこうか」という話題は、決して遠い世界の話ではなくなっています。

でも、ここで一度立ち止まりたいのが、

「そもそも、金に“割安・割高”って、本当にあるの?」

という素朴な疑問です。
株式や不動産と違い、金は家賃や配当のような「収入」を生まない資産です。にもかかわらず、当たり前のように「今は割安」「ここからさらに上昇余地がある」といったコメントが飛び交います。

この記事では、「金相場にバリュエーション(価値評価)はあるのか?」という視点から、子育て世代の家計にとって、金をどう位置づければいいのかを、やさしく整理してみます。


株には「割安・割高」があるけれど、金は少し性質が違う

株式は“会社の将来のもうけ”を買っている

まず、株式の「割安・割高」とは何かを、ざっくり整理しておきます。

株式の場合、私たちが買っているのは、その会社がこれから生み出すであろう利益やキャッシュフローです。
そのため専門家たちは、

  • 売上や利益の成長率
  • 自己資本利益率(ROE)やROICなどの収益性
  • PBR(株価純資産倍率)などの指標

といった数字をもとに、「この会社なら、将来これくらいの価値を生むはずだ」という“内側の価値”を考えます。
この内側の価値と、いまの株価を比較して、

  • 株価が安すぎる → 割安
  • 株価が高すぎる → 割高

と判断していくわけです。
つまり株式には、「基準にできる内側の価値」があると言えます。

いっぽう、金は「何かを生み出す機械」ではない

一方で、金そのものは、会社のように利益を生み出すわけではありません。
金を1キロ持っていても、それ自体が家賃や配当を運んでくることはありません。

たしかに、ジュエリーや工業製品などに使われることはありますが、家計の視点で金を持つときにイメージしているのは、

  • インフレへの備え
  • 通貨や金融システムの不安に対する保険
  • 「いざというときに世界中で価値が通用しやすいもの」

といった性質ではないでしょうか。

このように考えると、金には株式のような意味での「内側から算出できる妥当な価格」がありません。
だから本来は、株と同じ感覚で「割安・割高」を語るのは、少し無理があるのです。


それでも世の中に「金は割安・割高」という言葉があふれる理由

① 過去の価格と比べて「高い・安い」と言っているだけのことも

金について語られる「割安・割高」は、よく見ると“過去との単純な比較”であることが多いです。

  • 「過去10年の平均より今は高いから割高」
  • 「リーマンショック前の水準に比べると、まだ安い」

これは、あくまで
「歴史的な価格レンジの中で、今は上の方にいるか、下の方にいるか」
を言っているだけです。

もちろん、トレードの目安として「だいぶ上のほうまで来ているな」と感じる材料にはなります。
けれど、それは「内在価値から見て安い・高い」という意味ではありません。

② 「モデルからズレている=割安・割高」と呼んでしまう

もう少し専門的なレポートになると、

  • 実質金利(インフレを考慮した金利)との関係
  • ドル指数との関係

などから「本来ならこのくらいの価格のはず」というモデルをつくり、その線からズレていると「割安」「割高」と表現することがあります。

しかし、これもよく見ると、

「自分たちが作った経験則のモデルから見て、いまは高め/低めに位置している」

と言っているだけで、やはり株のような意味での“本来価値”とは違います。

③ 「買ってほしい側」にとって、便利な言葉になりやすい

もう一つ、子育て世代の家計にとって気をつけたいのは、
「割安・割高」という言葉が、販売する側にとって非常に使いやすいという点です。

  • 「今は割安水準なので、長期保有のチャンスです」
  • 「ここからさらに上昇余地があります」

という説明は、聞いている側からすると「お得そう」に感じられます。
でも、その根拠をよく聞いてみると、

  • 「過去と比べて低いだけ」
  • 「独自のモデルではそうなっているだけ」

ということも少なくありません。
ここを見抜けるかどうかが、家計を守る上での大事なポイントになります。


子育て世代の家計にとって、金をどう位置づければいい?

「増やすため」ではなく「守るため」の資産として考える

ここまで見てきたように、金は株式のように
「企業の成長に乗って資産を増やす」タイプの資産ではありません。

どちらかというと、

  • 通貨価値が大きく揺れたときの“保険”
  • インフレが長期化したときに、資産が目減りしすぎないための“クッション”

といった「守りの資産」として位置づけるのが現実的です。

もし、家計の中で金を持つのであれば、

  • 「教育費や老後資金を増やすためのメイン」は、あくまで積立投資や株式・投資信託など
  • そのうえで、「全体の何%かを、長期の保険として金に振り向ける」という考え方

といったバランスを意識しておくと安心です。

「割安だから買う」ではなく、「役割があるから持つ」

子育て世代の家計にとって大切なのは、
「金が今、割安かどうか」ではなく、「自分たちの家計にとって、どんな役割を持たせるのか」です。

たとえば、こんな問いかけが目安になります。

  • 今の家計で、一番守りたいお金はどこか?(教育費・老後資金・生活防衛資金など)
  • そのうち、金のような“保険的な資産”に回してもいいのは、どのくらいの割合か?
  • 金を買ったことで、かえって毎月の生活や教育費の準備が苦しくならないか?

このあたりを家計全体の中で整理したうえで、

「役割があるから、少しだけ持つ」

という発想に切り替えると、
「今が割安かどうか?」というノイズに振り回されにくくなります。


まとめ:言葉に振り回されず、家計の“ストーリー”で判断する

最後に、ポイントを整理します。

  • 株式には「将来の利益」という内側の価値があり、それと株価を比べることで“割安・割高”を考えられる。
  • 一方、金はキャッシュフローを生まないため、同じ意味での「バリュエーション」はほとんどできない。
  • それでも「割安・割高」と言われるのは、過去との単純比較や独自モデルとのズレを、わかりやすく言い換えているだけのことが多い。
  • 子育て世代の家計では、「増やすため」ではなく「守るため」の資産として、無理のない範囲で位置づけるのが現実的。

「今は割安です」「買い場です」といった言葉は、どうしても耳に心地よく響きます。
でも、その言葉の裏側には、「どんな前提で、何と比べてそう言っているのか」という背景があります。

大事なのは、「割安だから買う」ではなく、

「わが家の家計のストーリーの中で、どんな役割を持たせたいのか」

という視点です。

もし、

  • 教育費と老後資金、どちらを優先すべきか迷っている
  • 積立投資・保険・現金・金など、いろいろ勧められて混乱している

という状況であれば、まずは家計全体のバランスを一度整理してみることをおすすめします。


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「どれを買うか」より前に、「何を守り、何に備えたいのか」。
そんな問いを一緒に整えながら、無理のない資産づくりを進めていきましょう。

最終更新:2025-11-14|監修:齊木 正夫(CFP®/宅地建物取引士)

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