2024年4月施行の改正により、相続登記は3年以内の申請が法律上の義務に。正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象になり得ます。この記事では、期限・救済制度(相続人申告登記)・必要書類セット・進め方を実務順にまとめました。
※登記の要件や様式は法務局・案件により異なります。最終判断は法務局の最新案内や専門家へ。
まずは要点(期限・罰則・救済)
- 期限:「相続により不動産を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請。
- 過料:正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料対象になり得る。
- 救済:準備に時間がかかる場合は、相続人申告登記(「相続人である旨の申出」)で義務履行とみなす道あり。
- 関連:所有者の住所・氏名変更登記も変更の日から2年以内の申請が義務化(開始時期は後掲)。
ポイント:3年の相続登記と2年の住所・氏名変更登記は別管理。ガントで並走させると安全です。
必要書類セット(相続登記・基本)
身分・原因関係
- 戸籍一式(出生〜死亡)または法定相続情報一覧図(写し)
- 登記原因証明情報(遺産分割協議書/遺言書の写し 等)
- 相続人の本人確認書類
物件・費用関係
- 固定資産評価証明書(最新年度)
- 不動産の所在・地番・家屋番号が分かる資料(納税通知書 等)
- 登録免許税分の収入印紙(概ね評価額の0.4%、百円未満切捨て・最低1,000円)
委任・補足
- 代理申請時の委任状(司法書士等へ依頼する場合)
- 共有の場合は各相続人分の書類
- 相続放棄・限定承認・検認要否など個別事情の証憑
戸籍一式の代わりに法定相続情報一覧図を作ると、無料交付&複数通使い回しができて実務がラクです。
進め方(相続登記→完了まで)
- 不動産の特定:固定資産税の納税通知書等で所在・地番・家屋番号を確認。
- 人と原因の確定:遺言の有無/遺産分割の方針を整理。戸籍一式 or 法定相続情報一覧図を準備。
- 評価証明の取得:市区町村で固定資産評価証明書を取得(年度ごと)。
- 申請書作成:「原因(例:令和◯年◯月◯日相続)」と持分、添付書面を記入。
- 申請:不動産所在地を管轄する法務局へ提出(窓口/郵送)。
- 補正対応:法務局からの照会・補正依頼に対応。
- 完了確認:登記完了後、登記事項証明書で名義・持分を確認。
うまく進まない時は:「相続人申告登記」で義務履行を先に確保→並行して遺産分割や所在調査を進める手もあります。
相続人申告登記(相続人である旨の申出)とは?
- 相続登記の準備が整わない場合に、申出により義務履行とみなす制度。
- 申出は相続人ごとに必要(代表者による代理提出は可)。
- 権利の移転・法定相続分の確定をするものではない(売却等には別途相続登記が必要)。
- 必要書類は「申出人が相続人であることが分かる戸籍」等(相続登記ほど重いセットは不要のことが多い)。
関連:住所・氏名変更登記の義務化(2年以内)
不動産所有者の住所や氏名が変わった場合、変更の日から2年以内に登記申請が必要です(正当な理由なく怠ると5万円以下の過料)。制度開始時期は法務省特設の最新案内で確認してください。
- 相続登記と別義務。転居・改姓があったら早めに申請。
- 複数不動産がある場合の扱い・添付書面は法務局案内に従う。
費用の目安(登録免許税・実費)
- 登録免許税:原則「固定資産税評価額 × 0.4%」。100円未満切捨て、税額が1,000円未満なら1,000円。
- 実費:評価証明・戸籍等の取得手数料、郵送費など。
- 専門家費用:司法書士へ依頼する場合は別途報酬(事務所により異なる)。
- 法定相続情報一覧図:交付は無料(作成に必要な戸籍等の取得費は別途)。
よくある詰まり&回避策
- 相続人確定に時間:戸籍一式が重い→まず相続人申告登記で期限対応→並行して収集。
- 評価証明の年度違い:評価証明は最新年度で統一。年度跨ぎに注意。
- 共有の持分記載ミス:協議書の持分と申請書の整合をダブルチェック。
- 住所・氏名の不一致:相続登記前に住所・氏名変更登記を先行または同時に整備。
まとめ:3年・2年の“二本柱”を切り分け、先に義務を満たす
相続登記は3年以内、住所・氏名変更登記は2年以内。まずは相続登記(または相続人申告登記)で義務履行を確保し、書類を整えながら本登記へ。期限と整合を見える化して、無理なく進めましょう。