ETFが増えたのに投資信託が選ばれる理由──「続く仕組み」で考える家計の資産づくり

ETFがこんなに多彩なのに、なぜ多くの人は「投資信託」を選ぶの?

「銀行」「高配当」「ロボット/オートメーション」「AI」など、テーマがはっきりしたETFはいま選択肢として目に入りやすくなっています。

ただ、これを“つい最近の新しい流れ”と捉えるとズレます。背景には、2000年代の土台があり、2010年代後半〜2020年代前半にかけて商品が整理され、選びやすい形で出揃ってきた――という経緯があります。

それでも、資産づくりの入口では、いま(2026年)も「投資信託(とくに積立)」が主役になりやすい。これはETFが劣っているからではなく、多くの家庭が求めているのが「面白い商品」より「生活に溶け込む仕組み」だからです。

この記事では、家事・育児・仕事が重なりやすい時期を前提に、なぜ投資信託が選ばれやすいのかを、判断材料として分解します。


理由1:投資の本当のハードルは「知識」ではなく「継続」

資産づくりで効いてくるのは、当てる力より、続ける力です。ところが現実の生活では、

  • 家計の見直しは必要
  • 子どもの予定は読めない
  • 自分の余裕は日々変わる

こういう「変動」が当たり前に起こります。だからこそ、続けるには仕組み化が重要になります。

投資信託は、積立設定(毎月・毎週など)を一度決めれば、あとは自動で買い付けが積み上がる形にしやすい。これは「投資がうまい人向けの便利」ではなく、むしろ忙しい人ほど必要な設計です。

ETFでも積立自体は可能な場合がありますが、証券会社や商品によって設定のしやすさに差が出やすく、「買う日」「口数」「注文方法」など、生活の中に“判断”が入り込みやすい。判断が増えるほど、続ける難易度は上がります。


理由2:ETFは「意思決定の回数」が増えやすい(それが疲れになる)

ETFは株式と同じように市場で売買されるので、買うときに次のような選択が発生します。

  • 成行にする? 指値にする?
  • 今日は買う? それとも様子を見る?
  • 何口買う?(予算が中途半端に余る/足りない)

慣れている人にとっては合理的で、工夫のしがいもあります。でも資産づくりを始めたばかりの家庭にとっては、ここが負担になりやすい。

投資信託(積立)は、この「選択の回数」を小さくできます。つまり、迷いが起きにくい形に最初から寄せられる。子育て期に必要なのは、“正解を当てるための選択肢”より、ブレないための摩擦の少なさだったりします。


理由3:価格の見え方が、心の揺れ方を変えてしまう

ETFは日中ずっと価格が動きます。だから目に入るたびに、感情が反応しやすくなります。

  • 上がっていると「今買うのは怖い」
  • 下がっていると「もっと下がるかも」
  • 急に動くと「自分は間違えたのでは」

これは性格の問題ではなく、人間の仕様に近いものです。価格が見えるほど、反応が増える。反応が増えるほど、行動がぶれやすくなる。

投資信託は基本的に「1日1回の基準価額」で、ETFより刺激が少ない。だから、続けるうえで余計な感情の揺れを増やしにくいという特徴があります。資産づくりで大切なのは、“上手に感じないこと”ではなく、“揺れても続く形を持つこと”。その観点で投信の仕組みは相性が良いのです。


理由4:「分配金」の扱いが、家庭の運用では地味に効く

ETFには分配金が出るタイプも多くあります。分配金は悪いものではありません。ただ、家庭の運用で現実的に起きるのは、こういう話です。

  • 分配金が入ると、気持ちが少しラクになる
  • でも忙しいと、再投資の操作を後回しにしやすい
  • その結果、「再投資するはずだったお金」がほどけやすくなる

ETFの分配金は通常、いったん証券口座の預り金(現金)に入ります。ここに現金が積み上がると、次の買い付けや出金に紛れて、「再投資する予定だったお金」が気づかないうちに別の用途に回っていた――ということが起きやすくなります。

一方、投資信託は分配を出さずに内部で成長する設計のものが多かったり、分配があっても再投資型で運用しやすい商品設計があります。ここは「どっちが正しい」ではなく、家庭にとっては“手間が少ないほうが続きやすい”という話です。


理由5:「出会いやすさ」が投資信託に偏ってきた(日本の導線の話)

最後は、個人の好みというより、日本の資産形成の導線の問題です。

多くの人は、資産づくりを始めるときに、

  • NISAの案内ページ
  • 証券会社アプリの積立設定
  • 銀行やネット記事の「まずは積立」

といった入口から入ります。ここで前に出てきやすいのは、やはり投資信託です。つまり、最初に触れる商品が投信になりやすい構造があります。

ETFは「選べるようになると便利」な道具ですが、入口の導線が投信ほど親切に設計されていないため、結果として投信が“主流の入口”になりやすい、という面があります。


参考事例:同じ「投資」でも、つまずく場所が違う

ここからは、よくあるパターンを3つだけ。どれも“知識不足”というより、生活の負荷で起きることです。固有名詞は出しませんが、現場ではかなり頻繁に見かけます。

事例1:ETFを買ったはずなのに、気づけば「見て疲れる」運用になっていた

最初は「テーマがわかりやすいから」とETFを選びました。ところが、価格がいつでも見えるせいで、ちょっとした下げで不安になり、上げれば「もっと買うべき?」と考え始める。

結果として、やることが増えます。本来は増やしたかった資産より先に、“気持ちの揺れ”が増えてしまった状態です。

このケースでは、買う商品を変えるより、まず見ないでも回る仕組み(積立・自動化・チェック頻度の制限)を作るだけで、運用のストレスが大きく下がります。

事例2:「分配金がうれしい」はずが、再投資が後回しになっていく

分配金が定期的に入ってくると、気持ちはラクになります。ところが忙しいと、再投資の操作を後回しにしやすい。

分配金は通常、いったん証券口座の預り金(現金)に入ります。ここに現金が積み上がると、別の買い付けや出金に紛れて、「再投資する予定だったお金」がほどけやすくなります。

この場合に必要なのは、“根性”というより設計です。分配のない(または再投資しやすい)商品に寄せる、あるいは預り金を再投資のルールで扱うだけでも、意図が保たれやすくなります。

事例3:投資信託は“退屈”だけど、退屈だから続いて結果が出た

最初はETFのほうが魅力的に見えました。ただ、生活は忙しい。そこで、投資信託の積立を「作業」ではなく「固定費」に近い扱いにして、淡々と続けました。

数年たって振り返ると、何かを当てたわけではないのに、「続けた」という事実が結果になっていた。このパターンは派手さがありませんが、家計の現場では強いです。


じゃあETFは不要?──いいえ、役割が違うだけ

ここまでの話は、「投資信託のほうが正しい」という意味ではありません。

ETFにはETFの良さがあります。たとえば、

  • テーマが明確で、狙いがはっきりしている
  • 指数や構成銘柄が見えやすい
  • 必要なときに必要な量を調整しやすい

ただ、暮らしの中で投資を続けるうえでは、まず負担を増やさずに「続く形」を作ることが優先になりやすい。その土台ができてから、「もう少しこうしたい」が出てきたときに、ETFを補助的に使う――この順番なら、無理が起きにくい。


まとめ:商品選びより先に「続く仕組み」を決める

ETFか投資信託かは、優劣ではなく、生活との相性です。

家計を回しながら資産づくりをするなら、一番大事なのは、

「がんばって正解を当てること」ではなく、「迷っても続く仕組みを先に作ること」

もし今、情報が多すぎて疲れているなら、まずは投資信託の積立で“自動で続く形”を作る。そこから必要に応じてETFという道具を足す。焦らなくて大丈夫です。

続けられる形ができていれば、商品は後からでも選べます。資産づくりは、生活を削ってやるものではなく、生活を支えるために育てていくものだからです。

最終更新:2026-01-04|監修:齊木 正夫(CFP®/宅地建物取引士)

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