
「教育費が心配…」その気持ちは、“情報不足”だけが原因ではないかもしれません。
子どもの成長に合わせて、少しずつ現実味を帯びてくる「教育費」の話。
奨学金や給付金、学資保険やNISAの活用など、調べれば多くの情報が出てくる時代になりました。それでも不安が消えない…という声は、あとを絶ちません。
実はこの不安、「情報が足りないから」ではなく、「暮らしにどう組み込めばいいのかが見えていないから」かもしれません。教育費という“未来の大きな出費”を、日々の家計の中でどう位置づけていくか──そこに、見落とされがちな視点があります。
今回は、「制度の知識」や「節約テクニック」ではなく、“わが家らしい経済設計”を整えるためのヒントをお伝えします。数字ではなく、安心から考える教育費。いま、ここから始めてみませんか?
「知らないから怖い」ではない──“設計されていない未来”に感じるモヤモヤ
教育費の不安について話すと、多くの方がこう言います。「何にいくらかかるのか、わからないから怖い」と。
たしかに、進学パターンによって費用は大きく変わりますし、公立・私立・自宅・下宿──選択肢によって必要資金は大きく異なります。ですが、不安の本質は「情報がないこと」ではないのです。
実は多くのご家庭に共通するのは、「教育費の全体像はなんとなく知っている。でも、わが家がどう備えたらいいかがわからない」という感覚。
つまり、「金額」や「制度」は知識として持っていても、“設計”として落とし込めていない──ここにモヤモヤの正体があります。
たとえば、家を建てるときは、資金計画を立て、間取りを考え、生活動線まで想像して設計しますよね。ところが教育費になると、漠然と「なんとかなる」「学資保険に入っておけば安心」といった、部分的・断片的な準備で終わってしまうことが多いのです。
不安は、未知のことに対してではなく、「備えられていない」と感じたときに強くなります。
だからこそ、「制度を調べる」だけではなく、「わが家に必要な準備とは何か?」を軸に、感情と行動をつなぐ設計を描く必要があるのです。
「今の余剰で積み立てる」は、未来の足かせになる?
教育費を考えるとき、多くの家庭が最初にとる行動は「毎月いくら積み立てられるか?」の試算です。そして、家計に今少しでも余裕があれば、その中から無理のない金額を設定して、学資保険や定期預金、つみたてNISAなどに振り分ける──これは一見、とても堅実な行動に見えます。
しかし、ここに“見えない落とし穴”があります。「今の余剰」をベースにした積み立て方は、ライフステージの変化を見落としがちなのです。
子どもの進学時期は、多くの家庭にとって「収入のピークが過ぎ、支出のピークが訪れる」タイミング。夫婦のいずれかがキャリアを変えたり、親の介護が始まったりと、複合的にお金が出ていく可能性が高まる時期でもあります。
にもかかわらず、今の収入・今の生活水準から「無理なく払える金額」を設定してしまうと、未来における“生活の変化”に備える設計が抜け落ちるのです。これは、教育費が“将来の生活費”であるという認識が弱いまま準備を進めてしまうことに起因します。
教育費とは、単なる「出費」ではありません。それは、家族の未来におけるライフスタイルの変容を象徴する費用です。
将来の家計と暮らしの全体像を見据えて、“今の余剰”ではなく「未来に必要な暮らしから逆算する」という視点が不可欠なのです。
“制度に任せる”という錯覚──支援は“設計”の代わりにはならない
教育費の話になると、「高校までは無償化」「大学も奨学金がある」「子どもが行きたいと言ったら、その時考えればいい」──そんな声をよく耳にします。確かに、日本の教育制度は年々充実してきており、給付型の奨学金や学費減免制度も整ってきています。しかし、この“安心感”には注意が必要です。
制度は「最低限を保障するための仕組み」であって、「家庭の理想や価値観に基づいた進路」を保障してくれるわけではありません。たとえば、地方から都市部の大学に進学する場合、家賃や生活費の負担は想像以上。給付型奨学金を受けられたとしても、それだけで賄えるとは限りません。
また、制度に“任せすぎる”と、家族としてどんな進路を応援したいか、どんな価値観を大切にして進学費用を準備するかといった、「家庭の意志」と「設計力」が希薄になっていきます。
実際、進学のタイミングで「この学校なら無償化の対象だから」「こっちは高いからやめておこう」と、経済的都合で進路の選択肢が削られてしまうケースは少なくありません。
逆に言えば、家庭で“設計”して準備しておくことで、制度は選択肢を広げるための後押しになります。支援を「軸」にするのではなく、支援はあくまで「補助」として捉える──この意識の違いが、進学時の迷いと後悔を大きく減らします。
未来の選択肢を広げるためにこそ、「頼れる制度があるから大丈夫」と思考を止めず、自分たちの暮らしと子どもの未来の関係を、今から描いておくことが、教育費設計の第一歩なのです。
“使ってしまう”お金に、未来の教育費が隠れている
「なかなか教育費に回せるお金がない」──そんな声をよく聞きます。けれど、よく見てみると、毎月の中で“なんとなく使っている”出費は意外と多いもの。カフェでの一息、セールでつい買った子ども服、気晴らしに購入したネットショッピングの小物──それぞれは小さくても、積み重なると大きな金額になります。
ここで大切なのは「節約しよう」と頑張ることではありません。「なぜ、そのお金を使ってしまったのか?」という行動の背景に目を向けることです。
忙しさや疲れ、不安、孤独感、達成感を味わいたい気持ち──私たちは無意識のうちに、感情の“調整役”としてお金を使っていることが多いのです。
たとえば、子どもとの関係に罪悪感を持っていると、つい“モノで埋めよう”としてしまうことがあります。パートナーとのすれ違いがあると、自分へのご褒美が増えることもある。こうした“感情ベースの消費”は、単なる浪費ではなく、心のバランスを取るための行為でもあるのです。
だからこそ、「無駄遣いをやめよう」ではなく、「自分の心と暮らしをどう整えるか?」という視点に切り替えることが、教育費を生み出す第一歩になります。
毎月の使い方を振り返るとき、「これは何のために使ったのか?」「このお金は、自分にどんな感覚をもたらしていたのか?」という問いを加えるだけでも、見え方が変わってきます。
“今の満たし方”を整えることが、“未来の備え”を生み出す──それが、貯金額や節約テクニックだけでは語れない、暮らしと教育費の本当のつながりです。感情の使い方とお金の使い方がリンクしていることに気づくと、自然と「使わずに貯まる」流れが生まれてきます。
“今の私たち”が整えば、未来の不安は自然とほどけていく
教育費は、決して「がんばって節約した人」だけが用意できるものではありません。大切なのは、“先のために何かを我慢する”という発想から、自分たちの暮らしを丁寧に整えるという感覚へのシフトです。
今、どこにお金を使っているか?
それは、今どんな気持ちで過ごしているか、どんな「満たされなさ」や「疲れ」があるか、という暮らしの写し鏡でもあります。
だからこそ、数字の話から始めるのではなく、感覚の整え直しからスタートすることが、結果的にいちばんの近道になることが多いのです。
教育費を準備することは、単に“未来の支出”に備えるということではありません。家族の暮らしそのものを見つめ直し、より心地よく生きていくための土台を整えるプロセスでもあります。
そう考えたとき、「お金が足りないから不安」なのではなく、「今の過ごし方に、ほんの少し“ズレ”があるから違和感がある」のかもしれません。
まずは、あなたの「使い方」を責めるのではなく、やさしく見直すことから始めてみませんか?
数字よりも先に、“気持ち”に目を向ける──その視点こそが、教育費と暮らしを一緒に整えていく鍵になるのです。
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