相続の“お金編”は、準確定申告(4か月以内)と相続税(10か月以内)を一本の線で管理するのがコツ。この記事では、準確定申告の要否判定・必要書類、相続税のざっくり概算フローと、納税資金を整える現実的な資金繰りをまとめました。
※制度の細部・要件は個別事情で異なります。最終判断は税務署/国税庁の最新案内や専門家にご確認ください。
まず全体像:4か月と10か月を“別管理・並走”する
- 4か月以内:被相続人の所得税「準確定申告」要否を判定→必要なら申告・納付/還付手続。
- 10か月以内:相続税の要否を判定→必要なら評価・分割・特例検討→申告・納付。
- 資金繰り:仮払い・保険金・給付金・売却・借入・延納/物納の順で現実的に組み立て。
① 準確定申告(4か月以内):要否判定と必要書類
「亡くなった年の所得について、確定申告が必要だったか?」をまず判定します。
申告が必要になりやすいケース
- 事業・不動産・雑所得がある(家賃・副業・年金+α など)
- 給与収入が多い・年末調整未済・複数の給与がある
- 株式・投信の譲渡、仮想通貨の売買、一時所得がある
必要書類の例
- 源泉徴収票/支払調書/年金の源泉徴収票
- 通帳・帳簿・売上/経費の明細、医療費・寄附金の領収書
- マイナンバー、相続人代表者の本人確認、相続人の署名押印
- 付表(相続人の状況)など、税務署様式
ポイント:医療費控除・寄附金控除・雑損控除などは還付の可能性があります。
年金は受給停止と未支給年金の請求も並走で。
② 準確定申告の進め方(実務フロー)
- 前年分・当年分の収入源と控除材料を洗い出す(通帳・帳簿・明細)。
- 相続人代表と提出税務署を確認(被相続人の住所地所轄)。
- 申告書を作成(e-Tax or 書面)。還付が見込める場合は口座情報を準備。
- 提出・納付(不足税)/還付手続。納付は期限厳守、軽減・延滞の回避。
税務署宛・問い合わせテンプレ
「被相続人◯◯◯◯の準確定申告について、必要書類と提出方法を確認したいです。
相続人代表は◯◯(続柄:◯◯)で、還付の有無・提出期限・付表等の取り扱いをご教示ください。」
相続人代表は◯◯(続柄:◯◯)で、還付の有無・提出期限・付表等の取り扱いをご教示ください。」
③ 相続税の“ざっくり概算”フロー
- 遺産総額を洗い出す(預貯金・証券・不動産・保険の“みなし相続財産”・貸付・未収金など)。
- 債務・葬式費用を控除(借入・未払税金・医療費未払 等)。
- 基礎控除を差引:3,000万円+600万円×法定相続人。
- 課税対象が出たら、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例など適用可否を検討。
- 簡易税率表で概算→納税資金の目安を把握。
※特例は申告が要件のものが多く、申告しないと使えません。早めに方針を固めましょう。
試算メモ欄(そのまま書き込み)
遺産総額(A): 円
債務・葬式費用(B): 円
課税ベース(A−B): 円
基礎控除:3,000万円+600万円×( )人 = 円
課税対象: 円
想定特例:配偶者/小規模宅地( ㎡ )/その他( )
概算税額メモ: 円
納税資金必要額: 円(うち現金手当て: 円)
債務・葬式費用(B): 円
課税ベース(A−B): 円
基礎控除:3,000万円+600万円×( )人 = 円
課税対象: 円
想定特例:配偶者/小規模宅地( ㎡ )/その他( )
概算税額メモ: 円
納税資金必要額: 円(うち現金手当て: 円)
④ 納税資金の作り方(優先順位の考え方)
短期で現金化
- 預貯金の仮払い(葬儀費等の当座・不足分は要検討)
- 死亡保険金(受取人固有財産の場合は相続財産と切り分けやすい)
- 未支給年金・給付金の請求
売却・借入
- 不動産・有価証券の一部売却(税・手数料・時期に注意)
- 相続人の金融機関借入・事業承継等での資金調達
- 一時的な立替(後に代償金で調整)
延納・物納(最後の選択肢)
- 延納:要件により分割納付(利子税発生)。担保の提供が必要な場合あり。
- 物納:金銭一括納付が困難な一定要件で検討(審査厳格・対象資産限定)。
現金化の順番は、生活・事業を壊さず、かつ税コストが低いものから。売却は時間がかかるため、10か月の期限から逆算して着手を。
スケジュール管理表(コピー利用可)
期限 | やること | 誰が | 進捗/メモ |
---|---|---|---|
4か月以内 | 準確定申告の要否判定→申告・納付/還付 | 相続人代表 | |
随時(早期) | 保険金・仮払い・給付の手配(資金繰り) | 担当者 | |
10か月以内 | 相続税:評価・分割方針→特例検討→申告・納付 | 相続人全員 |
よくある詰まり&回避策
- 準確定申告と相続税の期限を混同:別管理のガントで並走。
- 死亡診断書原本が不足:必要部数を見積もり、各社の写し可否を確認。
- 保険や給付の申請遅れ:資金繰り悪化→早期電話で様式取り寄せ。
- 不動産売却の着手が遅い:10か月から逆算し、査定→媒介→引渡までの所要を見込む。
- 特例は申告が要件の見落とし:配偶者軽減・小規模宅地等は“使う前提”で早期設計。
Excel/スプレッドシート用:概算&資金繰りCSV
項目,金額(円),メモ
遺産総額(A),,
債務・葬式費用(B),,
課税ベース(A-B),,
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人),,
課税対象,,
概算税額,,
----
当座資金(仮払い・保険金・給付),,
売却予定(不動産・有価証券),,
借入予定,,
延納検討の要否(はい/いいえ),,
納税必要額,,
不足額,,
遺産総額(A),,
債務・葬式費用(B),,
課税ベース(A-B),,
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人),,
課税対象,,
概算税額,,
----
当座資金(仮払い・保険金・給付),,
売却予定(不動産・有価証券),,
借入予定,,
延納検討の要否(はい/いいえ),,
納税必要額,,
不足額,,
※金額は半角数字で入力。数式列を作れば自動集計できます。
まとめ:期限を分けて、資金は“早く・安全に・現実的に”
4か月(準確定)と10か月(相続税)を別トラックで管理し、特例前提の設計と資金繰りを早期に着手すれば、追い込まれずに進められます。まずは要否判定→資料集め→概算→資金手当ての順で一歩ずつ。