遺産分割協議の進め方:合意形成の台本と議事メモ、NG例→置換集

遺産分割協議は“準備8割・場づくり2割”。この記事では、台本(進行台本)議事メモの素案言い換えフレーズ集NG例→置換集まで一気に揃えます。
※正式な書面は最終的に「遺産分割協議書」(実印・印鑑証明)で作成します。相続人に未成年・行方不明・判断能力の課題がある場合は家庭裁判所・専門家に相談を。

全体フロー(合意までの5ステップ)

  1. 準備:遺産目録・戸籍一式・相続関係説明図・評価メモ・負債一覧を共有。
  2. 場づくり:議題・ゴール・時間・発言順・記録係を事前合意(オンライン可)。
  3. 協議:「方針→項目別→配分案→宿題」の順で進行。
  4. 合意形成:案の修正/比較→一次合意→文案化(協議書ドラフト)。
  5. 確定:協議書清書・押印・印鑑証明/本人確認書類の取得。

進行台本(初回ミーティング用)

【冒頭:趣旨とルール共有(5分)】
・本日の趣旨:遺産の全体像を共有し、配分方針のたたき台を作ること
・ゴール:次回までに確認すべき宿題と、配分案の選択肢を2〜3案に絞る
・ルール:順番に発言/相手の発言を遮らない/事実と意見を分ける/録音は合意がある場合のみ【アジェンダ】
1)遺産目録・負債一覧・評価メモの共有(10分)
2)配分の大枠(現金中心/不動産を誰が相続 等)の希望ヒアリング(15分)
3)項目別の検討(預貯金/有価証券/不動産/保険/負債)(30分)
4)特記事項(形見分け・祭祀財産・葬儀費用負担 等)(10分)
5)次回までの宿題とスケジュール(10分)【ファシリテーターの言い方例】
・「まず事実確認からはじめましょう」(評価額・残高・負債)
・「ここは“意見の場”に移ります。順にお聞きします」
・「全員の最低条件(譲れない点)を紙に書き出して、重なる部分を探します」
・「争点は一旦“保留箱”へ。宿題で検討して次回へ持ち越します」【合意形成の手順】
・配分案A/B/Cの比較表を用意(優先度・税コスト・資金繰り)
・一次合意→ドラフト作成→各自最終確認→清書・押印へ

議事メモ素案(テンプレ)

【会議名】第〇回 遺産分割協議
【日時】令和〇年〇月〇日(〇) 〇:〇〇〜〇:〇〇
【場所/形式】(対面/オンライン)
【出席者】相続人A・B・C、同席(任意):専門家 など
【記録係】(氏名)1. 事実確認
・遺産目録(版数/基準日):( )
・評価メモ(不動産/証券 等):( )
・負債一覧: ( )2. 希望・条件の整理(箇条書き)
・A:(最低条件/希望)
・B:(最低条件/希望)
・C:(最低条件/希望)3. 配分案(A/B/C)
・案A:ポイント(資金繰り/居住)
・案B:
・案C:

4. 宿題(担当・期日)
・不動産相場・固定資産評価の確認:担当A/◯月◯日
・証券の評価・税コスト試算:担当B/◯月◯日
・仮払い・保険金の入金見込み確認:担当C/◯月◯日

5. 次回予定
・日時:◯月◯日(◯) ◯:◯◯〜
・アジェンダ:保留箱の検討/最終案の確定

【メモ】
(合意点/未合意点/トラブル防止メモ)

言い換えフレーズ集&NG例→置換集

前向きにする言い換え

  • 「あなたが悪い」→「事実の確認から始めさせてください」
  • 「絶対ムリ」→「他の選択肢も含めて検討したい」
  • 「全部欲しい」→「優先度の高い順に整理しましょう」
  • 「昔の話を蒸し返す」→「今回の相続に関係する事実に絞りませんか」
  • 「時間がない」→「今日決めること/宿題に回すことを分けましょう」

NG例→置換集(テキストそのまま貼り換え可)

  • NG:「感情的にならないで」→ OK:「一度区切って整理しませんか」
  • NG:「それは無理」→ OK:「条件を整えれば可能か検討します」
  • NG:「それはあなたのせい」→ OK:「原因を一緒に確認させてください」
  • NG:「早く印鑑押して」→ OK:「清書案を共有したうえで、押印手順をご説明します」
  • NG:「価値がない」→ OK:「評価の根拠をもう一度確認したい」

配分案の作り方(3つの型)

型A:現金中心/等分+調整金

現金・換金性資産をベースに等分、居住不動産を誰かが取得する場合は代償金で調整。

型B:居住不動産優先

居住者が不動産を取得し、他の相続人へ現金・金融資産で調整。固定資産税・維持費の負担も明記。

型C:資産別分担(預金はA/不動産はB 等)

各人の希望・適性に合わせて資産の種類ごとに分担。税・維持コスト・換金性を合わせて比較。

遺産分割協議書ドラフト(雛形)

【表題】遺産分割協議書
被相続人:氏名(生年月日/死亡日)
相続人:氏名(続柄) …全員を列記第1条(目的)
相続人全員は、被相続人の遺産について下記のとおり分割協議を行い、合意した。第2条(各財産の帰属)
1. 預貯金:〇〇銀行△△支店 普通1234567 全額を相続人Aが取得する。
2. 不動産:所在〇県〇市…(地番・家屋番号)を相続人Bが取得する。
3. 有価証券:□□証券 特定口座の〇〇株式…を相続人Cが取得する。
(必要に応じて続く)第3条(代償金)
相続人Bは相続人Cに対し、代償金◯◯円を令和◯年◯月◯日までに支払う。

第4条(葬儀費用・負債の負担)
葬儀費用◯◯円は相続人各自が等分して負担する。住宅ローン…については○○とする。

第5条(清算条項)
本協議書に定めるほか、互いに何らの債権債務がないことを確認する。

作成年月日:令和◯年◯月◯日
相続人 住所 氏名 ㊞(実印) *印鑑証明書(発行後3か月以内)添付

※不動産の表示は登記事項証明書どおりに正確に。金融資産は口座番号・銘柄・数量まで明記すると後工程がスムーズです。

行き詰まったときの打開策(5つ)

  • 事実に戻る:評価根拠・残高・負債を再確認し、誤解を解消。
  • 代替案を出す:等分・代償金・資産別分担など型を切り替えて検討。
  • 第三者を挟む:専門家の同席・助言で冷静さと公平感を担保。
  • 宿題化:即断できない論点は期限を切って宿題へ。
  • 最終手段:家庭裁判所の調停・審判も視野(早期相談推奨)。

まとめ:台本と記録が“合意の近道”

遺産分割は、準備した資料を同じテーブルに載せ、台本どおりに進め、合意点と保留点を見える化するのが近道です。言い換えフレーズを活用して前向きな合意に繋げましょう。

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※本記事は一般的情報です。具体的な法的判断・書式は専門家の確認を推奨します。

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