
相続直後の資金流出を止めつつ、必要経費(葬儀費用など)をまかなうために、各窓口を「停止→確認→仮払い」の順で動かす実務ガイドです。電話トーク例・メール文例・提出書類のチェックリストを一式で掲載しました。
※制度・必要書類・限度額は金融機関・保険会社・年金種別で異なります。最終的には各窓口の最新案内を必ずご確認ください。
まずは全体フロー:止める→把握する→繋ぐ
- 停止:勝手に動く出入り(引落し・自動積立・カード・携帯・サブスク)を止める/故人口座は原則出金停止に。
- 確認:口座残高・定期/外貨・証券保有・保険契約・年金の有無を一覧化。未払い/過払い・ポイント・付帯保険も確認。
- 仮払い:葬儀費用など当座資金は、預貯金の仮払い制度・生命保険の保険金(または一部仮払)・未支給年金/給付などを活用。
銀行・ゆうちょ(預貯金)
死亡の連絡後、故人名義口座は原則入出金が制限されます。生活費の自動引落しやデビットは止まる想定で、代替口座へ切替を。
やること(停止→確認)
- 金融機関へ死亡の連絡(口座凍結・相続手続き開始)
- 自動引落しの切替(公共料金/通信/税金/保険料 等)
- 通帳・キャッシュカード・届出印/マイナンバー有無を確認
- 定期・外貨・投信の有無、貸金庫の利用状況を確認
仮払いのポイント
- 相続人は所定の範囲で預貯金の仮払い請求が可能(上限・計算方法は各行案内に従う/1金融機関あたり上限が設けられるのが一般的)。
- 用途は葬儀費用など当座資金想定。領収書の保存を。
電話トーク例(窓口/コールセンター)
相続手続きの開始と、当面の入出金停止の確認、預貯金の仮払い制度の案内をお願いします。
必要書類(死亡診断書/死体埋火葬許可証のコピー、相続関係書類、本人確認 等)と手続きの流れをご教示ください。」
証券(株・投信・NISA・持株会)
証券口座は相続手続が完了するまで売買・出金が制限されます。配当金の受取方法(株式数比例配分方式など)も確認を。
やること
- 証券会社へ死亡連絡(相続専用デスク)
- 保有一覧(株式・投信・債券・外貨・NISA枠)を取り寄せ
- 配当・分配金の受取方法、特定口座の年次報告書を確認
- 企業持株会・ストックオプションの扱いを勤務先人事に確認
仮払いの考え方
- 証券からの直接「仮払い」は一般に想定されず、現金当座は預貯金の仮払いや保険金で賄うのが実務的。
- 評価・分割方針(売却か移管か)は税・手数料を踏まえ検討。
年金(公的/企業年金)
公的年金は受給停止の連絡が最優先。未支給年金の請求可否、遺族年金・寡婦年金などの対象性も併せて確認します。企業年金・共済年金・企業の弔慰金制度も勤務先へ。
電話トーク例(年金窓口)
必要書類と期限、遺族年金や寡婦年金の該当可否も教えてください。」
- 必要書類例:年金証書/死亡の事実が分かる書類(コピー可否は窓口案内に従う)/戸籍・住民票関係/請求者の本人確認・通帳 等
- 企業年金・退職金・弔慰金は勤務先人事・共済窓口で制度と申請様式を確認
生命保険・共済(保険金・仮払金)
保険証券・契約者サイト・通帳引落しから契約の有無を洗い出し、保険金請求(または一部の仮払)を手配。保険は受取人固有財産のケースが多く、相続財産と切り離して速やかに資金化できるのが利点です。
やること
- 保険会社へ死亡連絡(契約番号が不明でも氏名・生年月日で検索依頼)
- 保険金請求書類の取り寄せ(受取人・支払口座・必要書類確認)
- 死亡診断書(原本)枚数配分の計画(銀行・保険・年金で必要数)
- 共済・団体保険・クレカ付帯の死亡保障も見落としなく
仮払いのポイント
- 保険会社によっては保険金の一部仮払制度あり(葬儀費用等)。
- 必要書類は会社ごとに細かく異なるため、案内書に沿って準備。
公共料金・通信・サブスク(名義変更/解約)
支払い停止で延滞・解約金が生じないよう、名義変更 or 解約を早めに。メールアドレスや電話番号が二段階認証に絡むため、ID管理にも注意。
- 電気・ガス・水道:名義変更または一時解約/検針票・お客様番号を控える
- 固定電話・携帯・ネット回線:回線停止・MNP・解約違約金の確認
- サブスク(EC/動画/クラウド/アプリ):アカウント停止・返金可否を確認
- NHK:解約または名義変更
窓口別テンプレ(電話・メール)
銀行・ゆうちょ(電話)
相続手続開始、入出金停止の確認、預貯金の仮払い制度の案内と必要書類をご教示ください。
(口座番号◯◯/支店◯◯/連絡先◯◯)
証券会社(メール)
本文:
お世話になっております。口座名義人(故人)◯◯◯◯の相続手続について、必要書類・相続専用書式・保有一覧の取得方法をご教示ください。
配当・分配金の受取方法やNISAの取り扱いも併せて確認したく存じます。
(連絡先:◯◯/相続人:氏名・続柄)
年金窓口(電話)
(基礎年金番号等/請求者情報)
生命保険会社(電話)
(契約番号が不明な場合は氏名・生年月日等で検索を依頼)
提出書類チェックリスト(共通イメージ)
- 死亡診断書(原本/コピーの可否は窓口指示に合わせる)
- 死体埋火葬許可証の写し(自治体交付)
- 戸籍関係(故人の除籍・改製原、相続人の現在戸籍)
- 相続関係説明図(下書きでも可/続編で清書テンプレ提供)
- 相続人代表の本人確認書類・マイナンバー(必要時)
- 受取口座情報(通帳・キャッシュカードのコピー等)
- 葬儀費用・医療費等の領収書(仮払い・給付の根拠)
※実際に求められる書類は窓口・制度で異なります。案内書の指定が最優先です。
よくある詰まりと注意点
- 口座凍結後に自動引落しが突然止まる→代替口座・支払方法を前倒しで設定。
- 死亡診断書の原本が足りない→必要枚数を見積もり、追加発行の可否を早めに確認。
- 仮払いの上限や条件は金融機関・保険会社で異なる→案内書・コールセンターで必ず事前確認。
- 証券の売却・移管タイミングで税や手数料が変わる→方針決定までむやみに動かさない。
- 年金停止や未支給年金の連絡遅れ→過払発生や還付遅延に繋がるため早期連絡。
まとめ:当座は「止める」→「把握」→「仮払い」で安全運転
まずは支払い系の暴走を止め、資産と契約の全体像を把握。そのうえで、葬儀費用など当座資金は預貯金の仮払い・保険金・未支給年金等を繋いでいくのが実務的です。各窓口の指定書類と期限に合わせて、無理なく進めましょう。