
「いま、何から手を付ければいい?」──最初の2週間にやるべきことを、“連絡・停止・仮整理”の順で迷わず進められる実務ガイドです。法定期限(死亡届の7日以内、準確定申告4か月以内、相続税10か月以内、相続放棄の熟慮期間3か月など)にも触れ、抜け漏れを防ぎます。
※本記事は一般的な手続きの要点です。個別の事情は自治体・年金機構・金融機関・専門家に必ずご確認ください。
最初の14日で目指す“3つの到達点”
- 「連絡」:ご家族・葬儀社・勤務先/学校・賃貸オーナー等の一次連絡を済ませる。
- 「停止」:年金・カード・携帯・サブスク・公共料金などの“勝手に動く出入り”を止め、詐欺・不正利用・延滞の芽を摘む。
- 「仮整理」:戸籍収集の着手、金融・不動産・負債のラフ棚卸し、熟慮期間の起算日メモ、形見分けはまだ保留。
なお、死亡届は7日以内、準確定申告は4か月以内、相続税は10か月以内、相続放棄の熟慮期間は原則3か月が目安です。
Day 0–1:最優先の実務(葬儀・死亡届・火葬許可)
- 医師から死亡診断書(原本)を受領(複数枚必要なことが多い/コピー可否は提出先で確認)。
- 葬儀社へ連絡(搬送・安置・火葬場の空き確認)。
- 市区町村に死亡届を7日以内に提出。同時に火葬許可(埋火葬許可)の申請→許可証受領。
- 勤務先・学校・近親者へ一次連絡(メール雛形は下に掲載)。
- 貴重品・通帳・印鑑・保険証券・パスワード控え等の保全(持ち出しは最小限/記録を残す)。
- 賃貸の場合は管理会社/貸主へ連絡(今後の賃料・解約起算の確認)。
- ペット・冷蔵庫・常夜灯など生活インフラの一時対応。
Day 1–3:停止系の“早押し”と、費用の流れを止める
悪用・延滞・口座残高不足を防ぐため、止める順番を意識します。
- 年金の受給停止(対象の方):マイナンバー収録者は原則届出省略可・未支給年金の請求も要確認。
- クレジットカードの停止(本会員死亡→家族カードも使えなくなる)。付帯保険の請求可能性を解約前に確認。
- 携帯回線・端末・ID(2段階認証に関わるため不正ログイン対策上も重要)。
- 各種サブスク(Amazon/楽天/動画配信/クラウド/有料アプリ等)とメールアドレスの扱いを整理。
- 公共料金・NHK:名義・支払方法を一時変更 or 解約。
- 郵便:故人宛は転送不可のため、重要送付元へ住所・連絡先変更を依頼。
電話テンプレ(カード会社・通信会社など:コピー用)
Day 3–7:戸籍収集の“着手”、お金の出入りを記録だけに
- 戸籍一式の収集に着手(出生〜死亡まで)。取り寄せ順は後続記事で詳述。
- 金融資産の存在把握(通帳・ネットバンキング・証券口座・保険・企業持株会等)。
- 負債の有無(カードローン・住宅ローン<団信>・連帯保証・リース)。
- 不動産の手掛かり(固定資産税の納税通知書・権利証/登記識別情報・賃貸借契約)。
- 形見分け・処分は保留(相続放棄の可否を判断するまで資産の処分はNG)。
- 現金の出入りは記録のみ(立替精算台帳を作る/領収書を残す)。
相続放棄の熟慮期間は原則3か月(起算は「自分に相続が発生したと知った時」)。判断材料を早めに集め、迷う場合は家庭裁判所への相談・申述を検討。
Day 7–14:税・保険・給付の“要否判定”と期限ウォッチ
- 準確定申告が必要か判定(収入のある方は要検討/期限は相続開始の翌日から4か月以内)。
- 未支給年金・高額療養費・葬祭費/埋葬料などの給付可否を確認(健康保険、国保・協会けんぽ、自治体)。
- 相続税の概算(基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人)に触れ、10か月以内の申告・納税の要否を検討。
- 生命保険の死亡保険金(非課税枠:500万円×法定相続人)の請求。
- 相続関係説明図の下書き(続編記事で清書テンプレを提供予定)。
- 今後のスケジュール表(14日/3か月/4か月/10か月)に期限を記入し、家族で共有。
停止・連絡の先一覧テンプレ(コピペ可)
公的系
- 市区町村:死亡届/火葬許可
- 日本年金機構:受給停止・未支給年金
- 健康保険:葬祭費/埋葬料
- 税務署:準確定申告(必要時)
金融・保険
- 銀行・ゆうちょ・証券(入出金は記録だけ)
- 生命保険(死亡保険金・共済含む)
- カード会社(本会員死亡→家族カード停止)
生活インフラ
- 電気/ガス/水道(名義・支払方法)
- 固定電話・携帯・ネット回線
- NHK(解約/名義変更)
- 郵便(故人宛転送不可→送付元に連絡)
住まい・仕事
- 賃貸:管理会社・貸主
- 勤務先・学校:不在・必要書類の確認
- 見守りサービス・介護事業者
一次連絡メール雛形(勤務先・学校・関係者向け)
件名:ご連絡(◯◯◯◯ 様 逝去の件)
本文:
関係各位
◯月◯日、◯◯(続柄:父/母/配偶者 等)の◯◯◯◯が逝去いたしました。
急なご連絡となり恐れ入りますが、当面の連絡窓口は◯◯(氏名・続柄・電話・メール)にお願いできますと幸いです。
葬儀日程や必要書類等が整い次第、改めてご案内いたします。
取り急ぎのご報告まで。
本文:
関係各位
◯月◯日、◯◯(続柄:父/母/配偶者 等)の◯◯◯◯が逝去いたしました。
急なご連絡となり恐れ入りますが、当面の連絡窓口は◯◯(氏名・続柄・電話・メール)にお願いできますと幸いです。
葬儀日程や必要書類等が整い次第、改めてご案内いたします。
取り急ぎのご報告まで。
※必要に応じて氏名・日付・連絡先をご変更ください。
よくある落とし穴(14日以内に避けたいこと)
- 形見分け・処分を先に進めてしまい、のちの相続放棄や評価・分割で揉める。
- カードの自動引落しやサブスクが残っていて気づかず数か月続く。
- ネット口座やスマホの二段階認証が分からず、資産把握が遅れる。
- 郵便転送の誤解(故人宛は不可のため、送付元へ連絡が必要)。
- 税・年金・給付の請求期限を失念(準確定申告4か月、相続税10か月、年金未支給・葬祭費は制度ごとに期限あり)。
まとめ:“連絡→停止→仮整理”で、家計の安全と選択肢を守る
最初の14日は、連絡で状況を整え、停止で勝手に動くものを止め、仮整理で次の判断(放棄・限定承認・分割・申告)に必要な情報を集める時間です。
期限があるもの(死亡届・年金停止・準確定申告・相続税・給付の請求)は、カレンダーに書き込みましょう。