年1回の見直しで、不動産は“育つ資産”になる
不動産運用は「買って貸す」だけで終わりではありません。
毎年の点検や改善を重ねることで、家賃収入の安定や資産価値の維持につながります。
逆に、見直しを怠ると、気づかないうちに空室期間が伸びたり、修繕費が膨らんだり…。
これは、家計を放置して無駄な出費が増えるのと同じことです。
そこで今回は、初心者でもできる「年1回の運用見直しチェック」のポイントを3つに絞って解説します。
家計簿をつけるような感覚で取り入れられる方法なので、今日から始められます。
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家計・不動産・将来設計まで一度にチェックできる、まねTama特製ツール集です。
- 家計見直しシート
- 不動産運用簡易チェック表
- ライフプラン目安早見表
- 将来価値計算ミニツール
第1章:収支の確認──「いくら入って、いくら出たか」を年次で整える
見直しの出発点は、数字の棚卸しです。
1年分の家賃入金と支出(ローン・管理費・修繕・税金など)を並べ、キャッシュフローと実質利回りを計算します。
家計簿と同じで、「見える化」だけでも意思決定がラクになります。
1)まず集める書類(10分)
- 賃貸管理会社の月次報告(または入金履歴)
- ローン返済表(年計:元金・利息の内訳)
- 管理費・修繕積立金の支払い明細(区分マンション)
- 固定資産税・都市計画税の納付書
- 保険の更新明細(火災・地震など)
- 突発修繕の請求書(給湯器・水漏れ等)
2)年次キャッシュフローの出し方
次の式に当てはめるだけでOKです。
年間キャッシュフロー = 入金合計(家賃・更新料・共益費等) − 支出合計
(ローン返済額〈元金+利息〉+ 管理費・修繕積立金 + 固定資産税等 + 管理委託料 + 保険料 + 修繕費)
3)実質利回り(ざっくり版)
「どれだけ効率よく増えているか」を年単位で把握します。
実質利回り = (年間純収益 ÷ 総投資額) × 100
※年間純収益=入金合計 − 運営費(管理費・修繕積立・固定資産税・管理委託・保険・修繕) − 利息
※総投資額=購入価格+初期費用(仲介手数料・登記等) − 借入額(頭金は含む)
きっちり税務基準に合わせる必要はありません(税務は確定申告で別途整える)。
年次の健康診断として「手元に現金がどれだけ増減したか」を掴めれば十分です。
4)原因を分解するチェック(5項目)
- 空室日数:前年より増えた? 繁忙期を逃した? 募集条件は相場±5%だった?
- 修繕費の増加:突発費用の内容は? 次年度は予防交換で抑制できる?
- 管理コスト:委託料の料率・メニューは適正? 相見積りは取った?
- 税・保険:更新で上がっていないか? 見直し余地は?
- 金利・返済:返済比率は家賃の70〜80%以内に収まっている?
5)ミニ事例:数値の“見える化”で赤字を回避
駅徒歩12分・1K。年間家賃96万円。昨年は空室1.5か月、今年は3か月に増加。
年次集計で管理写真の質と募集開始の時期遅れが原因と判明。次年度は繁忙期前倒し募集+写真改善で内見増、
空室1か月に短縮しキャッシュフローが黒字に回復。
6)アクションに落とす(来年の改善メモ)
- 繁忙期の1か月前に募集開始/価格は相場+3%で出し、1週間ごとに反応確認
- 写真は昼・夜2パターン撮影、ネット速度の実測値を掲載
- 給湯器が10年超 → 次故障前に計画更新(見積を先取り)
- 管理委託はメニュー見直し(部分委託で料率最適化)
7)年次テンプレ(コピペで使える見出し)
■ 物件名/年度
入金合計:__万円 支出合計:__万円 年間CF:__万円
空室日数:__日 募集開始:__月 家賃設定:相場±__%
大口支出(修繕等):__万円(内容:__)
来年の改善:①__ ②__ ③__
過去比較や家族・管理会社との共有がスムーズ。月次で入力→年末に自動集計がおすすめです。
第2章:市場動向のチェック──「外の変化」を年に一度、生活目線で更新
収支が悪化する理由は、物件内部だけではありません。
家賃相場・需要の層・供給量といった“外の変化”が静かに効いてきます。年1回でよいので、次の観点をまとめて更新しましょう。
1)家賃相場の「現在地」と「推移」
- 現在地:前章と同様にポータル3サイト横断(駅・築年±5年・面積±10%・間取り一致)。
実質賃料(家賃+共益費−フリーレント換算)で10件平均をメモ。 - 推移:昨年のメモと比較し、±何%かを記録。
±3%以上の差が出たら賃料・条件見直し候補。 - 回転スピード:気になる条件で「掲載→成約済」に変わるまでの日数を3件観察。
2)需要の“主役”が変わっていないか
- 単身→ファミリー/ファミリー→単身など、問い合わせ層の変化を管理会社・近隣業者にヒアリング。
- テレワーク・学生・高齢者など、直近1年で強かった層をメモ。
強い層に刺さる条件(ネット速度、宅配ボックス、手すり等)を1つ追加検討。 - 地域イベント・施設開業:大学の定員変更、大型商業施設・病院の新設/閉鎖は需要に直結。
3)供給の増減(競合の量と質)
- 新築供給予定:駅名+「新築」「賃貸」「マンション」で検索、来年の供給が増えそうかを把握。
- 競合の設備水準:同家賃帯の最新写真を10件チェック。
2口コンロ、独立洗面、浴室乾燥、無料Wi-Fiなど標準装備化している項目を拾う。 - 古さの見え方:築年が同じでも、写真の明るさ・内装デザインで見劣りしていないかを主観で点数化。
4)金利・移動コスト・生活導線の変化
- 金利動向:ローン見直しや買い替え需要に影響。
返済負担の増減は、家賃設定の柔軟性にも波及します。 - 交通の改編:バス路線の増減・新駅・駅改装は“体感距離”を変える要因。
- 生活インフラ:スーパー閉店/開店、24時間系店舗、宅配ボックス設置など「日常の楽さ」を更新。
5)生活目線の事例:強い需要層に寄せて空室短縮
駅徒歩10分・築22年・1LDK。昨年は単身ビジネス層中心の反響。今年のヒアリングで近隣に小規模保育園とスーパー新設が判明。
家族層の内見が増えると読み、ベビーゲート設置可の間取り説明・浴室乾燥の訴求・駐輪場2台OKを強調。
結果、前年度平均空室55日→今年は28日で成約。
6)3つの意思決定テンプレ(市場動向に応じて)
A:相場+需要が強い(追い風)
- 家賃は相場+3〜5%を試し、反応を見て微調整。
- 写真強化と初期費用の“見せ方”最適化(礼金0→申込数増)。
B:相場横ばい・供給微増(拮抗)
- 家賃は相場ジャスト。ネット無料 or フリーレントで差別化。
- 設備1点刷新(照明・水栓・アクセントクロス)で写真映え。
C:相場下落・供給増(向かい風)
- 条件改善を優先(初期費用圧縮・更新料見直し)。
それでも反応が鈍い場合は−3〜5%のレンジで素早く調整。 - 退去前募集+内見準備の前倒しで空室日数を短縮。
7)ミニワーク(10分)──「市場メモ」を作る
- 相場10件の実質賃料平均(今年/昨年)を記録:__万円 → __万円(前年比__%)。
- 強い需要層(単身/ファミリー/学生/高齢/テレワーク):____。
- 競合の標準装備で追随が必要なもの:____(例:独立洗面、無料Wi-Fi)。
- 来年に向けた条件案:
① 賃料__万円(相場比±__%) ② 付加価値____ ③ 募集開始月__。
例)「30代共働き、駅まで自転車、浴室乾燥と宅配ボックス重視」。
その人物に“刺さる”1改善が、来年の空室を縮めます。
第3章:設備状態の確認──「直す・替える・そのまま」を判断する年次点検
家賃や需要が適正でも、内見時に設備の印象が悪いと契約率は下がります。
年1回、生活者の目線で「設備の劣化度」をチェックし、直す・替える・そのままを判断しましょう。
1)点検すべき主要設備(室内)
- 水回り:キッチン・浴室・洗面・トイレの水栓や排水の水漏れ、カビ、変色。
- 給湯器:設置年数・動作音・お湯の出具合。10年超は計画更新の検討。
- エアコン:冷暖房の効き・異音・リモコン動作。製造年をチェック。
- 照明器具:明るさ不足や色温度の古さ(昼白色→温白色で印象改善)。
- 床・壁:傷・汚れ・剥がれ。ワックスやクロス貼替で写真映えUP。
2)点検すべき共用部(集合住宅)
- エントランス:清掃状態・郵便受け・掲示板の見やすさ。
- 廊下・階段:照明切れ・手すりぐらつき・滑り止めの劣化。
- ゴミ置き場:清潔感・ルール掲示の明確さ。
- 駐輪場・駐車場:ラインの消え・放置物の有無。
3)判断基準の目安
- 直す:安全性や機能性に関わる軽微な修繕(例:水漏れパッキン交換、クロス部分補修)。
- 替える:製造年・故障履歴・見た目の劣化で競合に劣る場合(例:エアコン10年超、給湯器13年超)。
- そのまま:機能に問題なく、見た目も許容範囲(例:軽い使用感程度)。
4)生活目線の事例:小さな交換で成約率アップ
築18年・2DKの物件。内見時、照明が蛍光灯で部屋が暗く感じられるとの声。
LED温白色に交換し、明るさと色味を改善。さらに玄関照明を人感センサー付きに変更。
費用は2.5万円でしたが、翌月の成約率が前年比+20%に。
5)ミニワーク(20分)──設備チェック表を作る
- 主要設備のリスト化(室内・共用部)
- 各項目に「年式」「状態(良・可・要改善)」「改善案」「見積額」欄を作成
- 来年度中に実施する項目に★印をつけ、優先順位順に並べる
6)改善アクションの優先度づけ
- 安全・衛生に関わる項目は最優先(火災リスク、水漏れ、滑り防止など)
- 入居者が日常でよく触れる箇所(照明、水回り、床)は次に優先
- 写真・第一印象に直結する箇所(玄関、エントランス、壁色)は3番目
年次点検で小さく回すことで、空室期間の短縮と入居期間の延長が期待できます。
第4章:運用見直しのまとめと次のアクション
年1回の運用見直しは、「資産の健康診断」のようなものです。
収支・市場動向・設備状態の3つをチェックするだけで、空室や家賃下落のリスクを大きく減らせます。
特に初心者の方は、全部を完璧にやろうとせず、「今年はここだけ改善」と決めて動くことがポイントです。
それだけでも翌年の数字は確実に変わります。
3つの見直しポイントを振り返る
- 収支の確認:収入・支出のバランスを数値で把握し、改善余地を見つける。
- 市場動向のチェック:相場や需要層、競合状況を把握し、条件や訴求ポイントを調整。
- 設備状態の点検:入居者目線で安全性・快適性・印象を評価し、小規模改善を継続。
生活目線での次の一歩
- まずは昨年と今年の家賃相場を調べる。
- 1つだけ低コストで改善できる設備を決める。
- 空室リスク対策を家族やパートナーと話し合う。
この3つを実行するだけでも、不動産運用は「持っているだけの資産」から「育てていく資産」へと変わっていきます。
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