「5G」とスマートフォンに表示されているのに、なぜこんなに遅いのか?
商用サービス開始から5年が経過した5G。
しかしその「実力」は、私たちの体感と一致しているのでしょうか?
「5Gにしてから4Gの時より遅くなった気がする?」多くの利用者がこの疑問を抱いているようです。
ここでは、5Gの技術的背景、現実の通信環境、そして政策動向まで踏み込んで解説します。
5Gの種類:「本物の5G」はまだ限定的
5Gには大きく2つの方式があります。
- NSA方式(Non-Standalone):既存の4Gインフラをベースに構築された5G。日本ではこれが主流です。
- SA方式(Standalone):真の意味での5G。超低遅延・大容量・多数同時接続が可能。
現在、多くの地域で「5G」と表示されているのはNSA方式、しかも4G周波数帯を転用した
「転用5G」です。
これでは速度や遅延性能において、従来の4Gと大差がないのも当然です。
5Gなのに4Gより遅い?その理由
「5Gに切り替わったらむしろ遅くなった」と感じるケースは珍しくありません。
以下のような要因が考えられます:
- 帯域幅の狭さ:転用5Gでは、4Gと同じ帯域幅を使っているため、通信速度が変わらない。
- エリア内の過密:5G対応エリアでも基地局が少なく、利用者が集中すると逆に遅くなる。
- 端末側の制限:5G対応端末でもSA方式やミリ波に対応していないことが多い。
郊外での実態:全国的な課題
都市近郊エリアでも、5Gは名ばかりで実態は4Gというケースが少なくありません。
これは地方に限らず、
全国的に共通する課題です。
通信事業者は「全国カバー率」をアピールしていますが、その大部分は転用5Gです。
各キャリアの展開状況(2025年5月現在)
2025年現在の動向を整理すると以下のようになります:
- NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク:5G人口カバー率は80~90%以上。ただし大半がNSA方式。
- 楽天モバイル:ミリ波基地局は多いが、カバー率は50%程度。通信品質にばらつきあり。
- ミリ波(28GHz帯)やSA方式:駅周辺やスタジアム、一部のビル内などで試験的展開中。
今後の見通し:やっと「本物の5G」へ
総務省は2025年度末に向けて、5Gの帯域幅拡張(Sub6帯域の100MHz幅追加)を計画中です。
さらに、2026年春には
新たなミリ波帯域(26GHz帯・40GHz帯)の再割当も予定されています。
これにより、SA方式による本格的な5Gの普及が期待されています。
まとめ:5Gのラベルに惑わされない判断を
5Gの表記があるからといって、必ずしも高速・低遅延であるとは限りません。
現状では、
表示と実態にギャップがあるのが現実です。
今後の通信環境の進化を見守りつつ、自身の利用環境や端末の対応状況を見直すことが重要です。
※エリアや通信状況はキャリアや端末により異なるため、最新の5Gエリアマップや仕様は各キャリアの公式サイトをご確認ください。